薫さんと恵さん、久保田さんも下着泥棒の被害を受けたらしく、緋村剣心も珍しく怒っています。そして、左之助さんは蛮竜を手入れしながら怒っています。
こうなると男の人って怖いですよね。
そう思いながらも頼もしくてカッコいい左之助さんと下着泥棒を捕まえるために徒党を組む東京の男性陣の団結力に嬉しく思う。
みんな、優しくて良い人達です。
「景さん、何だか大事ね」
「まあ、泥棒は悪いことですから」
「全く馬鹿な事をする男も居たものね」
そう言って呆れたように神谷道場の母屋の縁側に四人で並んでお茶を飲む私達の目の前を大きな風呂敷を背負い、左から右へと塀の上を走っていく二頭身の様な男の子が通る。
十数年後には元祖無差別格闘流の開祖として名を馳せる予定の八宝斎の姿に私は懐かしさを覚えつつ、通り抜けていく彼の背中を見送ってしまう。
今回、私は被害を受けていないです。
「忍者ごっこかしら?」
「ああ、あんなところを登ってもう」
「元気なのは良いことですね」
のんびりと三人で朗報を待っていると倭杖を構えた人斬り抜刀斎モードに意識を完全に切り替えている緋村剣心が八宝斎の事を追い掛けて、右から左へと塀の上を神速のスピードで走っていくのが辛うじて見えた。
左之助さんが増えて、井上君、長谷川君、だんだんと追い掛ける人数が増えていき、塀の向こう側を土煙を巻き起こして追い掛ける群衆に私は苦笑を浮かべる。
流石にやり過ぎですよ、八宝斎。
「あの子供が下着泥棒?」
「うわあ、如何にも助平な顔だったわね。阿爛や明日郎みたいね」
「「否定しないけど、言わないでくれ!」」
久保田さんの言葉に塀越しに声が聴こえてきました。どうやらあの土煙を巻き起こす群衆に紛れているのは事実のようですね。
「聴えていたみたいですね」
「景ちゃんさん、今日だけ泊めてほしいなあ♪︎」
「お断りします。愛の巣へお帰り下さい」
「あら、何かあるの?」
「旭ちゃん、あの二人と暮らしているのよ」
その一言に恵さんは大体の事を理解してくれたらしく、そうっと憐れみの視線を彼女に向けた。別に悪いことではないのですが、三人とも十八歳なので何も問題も間違いも起きないと信じたい。
それにしても、八宝斎は既に緋村剣心や左之助さんから逃げることが出来る程度には強くなっているようで、少しだけ不安になります。
「景さん、どうかしたの?」
「いえ、みんな元気だな、と」
「安心しなさい。貴女も元気よ」
「……フフ、そうですね」
私もまだまだ元気ですよ。