「ぐぬうぅ…いたいけなワシを囲んで殴りおって必ず復讐してやるうぅっ!!」
ゴゴゴゴと我が家の池に叩き落とされた怒りによって無意識的に戦気を高める八宝斎の事を見つめる視線に彼も気付いたのか。
にんまりと笑って飛び付こうとしてきた……けれど。私の顔を見ると飛び付くことを止めて、ジロジロと私の足元を犬のように周りながら眺めてくる。
「えと、どうかしたの?」
「今日は動いても大丈夫なのか?ワシが来たとき、血を吐いて倒れていたじゃろ?」
「……ああ、大丈夫ですよ。
そう言って微笑みを向けると「ワシは賢いからな、病気の
フフ、この頃の八宝斎は良い子なんですね。
「偉いですね。でも、女の子に優しくするなら下着泥棒なんてやめましょう。あの動きや力なら、武道家になって人助けするのも有りですよ?」
「ワシが武道家か。ヌハハハ!それなら可愛い女の子を沢山門下生にして侍らせるのも良いな!名前は知らんが、ナイスなアイデアだぞ!」
「あら、外来語を使えるの?」
「うむ!!ワシはハイカラじゃからな!」
私に手を振りながら「ヌハハハ!」と笑って塀を飛び越えて出ていった八宝斎だったけれど。「テメェ、なに人ん家に入ってやがる!!」という左之助さんの怒声と共に彼は空に吹き飛んだ。
コメディーリリーフな彼の強さは『絶対に死なない』という存在的価値によるものでしょうね。いわゆる【『バトル漫画の世界』に『ギャグ漫画のキャラ』を混ぜる】と、どんなに緊迫したシリアスな雰囲気や展開は完全崩壊してしまう現象の一つですね。
「ったく。なんなんだ、あれは?」
「お帰りなさい、左之助さん」
「ああ、ただいま。景はあのクソガキに何も変なことはされてねえか?」
「はい。何も酷いことも悪いこともされていませんよ。しとりとひとえも居ますから」
チラリと玄関から居間の方に視線を向けると顔だけ出して、床から天井まで上下に動く二人が見えます。左之助さんはピシッと固まっているものの、原理は簡単です。
スネコスリの親分に抱きついている二人が揺れる尻尾に身体を動かされているだけで、本当にそれ以外は危ないことも何もしていない。
「……愛娘たちが毒されてるな」
「かわいいですよね♪︎」
「嗚呼、本当にかわいいよ」
そう言って笑いながら左之助さんは私の頭をクシャリと優しく撫でてきた。