「母様、あの本読ませて」
「……良いでしょう。持ち出しはダメですよ?」
「ん!」
ほんの少しだけ悩んだものの、しとりの珍しいお願いを受け入れた私は本棚に仕舞っていた『技絵百般』と
彼女の読みたい本は『技絵百般』の剣術書。他にも武道書や技術書、鍛練書など様々な物を描き溜めています。鍛練書は左之助さんに頼み、実践して貰えた物を全て記載しているため、謂わば達人育成書ですね。
「……母様、読んで」
「え?ああ、まだ読めない文字もありましたね。良いですよ、ゆっくりと教えてあげます」
でも、しとりは理論より絵の動きを真似て簡単に覚えてしまえる。あれは私の身体に宿る『特典』というより彼女本来の
「ん!これ覚えたい」
そう言って彼女が指差したのは『月華の剣士』に登場する剣士の一人、二年前の地獄門事件の時には出てこなかった『天野漂』の技。
「ん!!」
軽やかに振るわれた竹刀は空を斬る。
───けれど。
「速すぎる故に、しとりの剣は軽すぎる」と、そう緋村剣心や薫さんは教えてくれた。もうちょっと重さを持てば深くダメージを与える事は出来るらしいものの、しとりは素早く竹刀を振り上げ、切り下ろす。
ただ、ひたすらに速さを追求した剣技だ。
「模倣から始まる…事実ですねえ」
沁々と言葉を思い出しながら、しとりが冊子と自分の動きを見比べて、感覚的に動きを直す姿を見つめる。正直、しとりは左之助さんのバトルセンスを引き継ぎすぎている気もするけど。
悪い人の多い時代ですから自衛出来るのは良い事です。でも、剣路君に負けたくないという気持ちの方が、しとりの中では強そうです。
「……母様、ぼわってしない」
「ぼわ?」
「ん!これ!!」
ペシペシとしとりの指差す場所を見ると剣で生み出した衝撃波が間欠泉のごとく吹き上がっている。確かに、ぼわっとしている。
「気功はまだ難しいかも?」
「おしえて!」
「ごめんなさい。私には使えないの」
まあ、獅子咆哮弾なら可能性はあるけど。
多分、私よりネガティブな人はいませんし。まあ、危ないことも怖いことも出来ませんから、しとりには「自信を持って『私は出来るぞ!』と思ってみて」と、それらしい事を教えてみる。
「しとりは、つよおぉおい!!」
カッ!と竹刀が目映く光り、ビームが出ました。
やっぱり、ウチの子は天才なのではないでしょうか?