何故か八宝斎の使った気功法を薫さんや緋村剣心、左之助さん達に解説する役目を頼まれ、私は断ることも出来ず、しとりとひとえの二人が私に向けている期待の目差しに不安を抱いてしまう。
もしも失敗したら、どうしましょう。
私は眼鏡のテンプルを摘まみ、レンズの汚れを拭き取って静かに神谷道場の道場内で正座しているみんなに視線を向けます。
不安を払拭したいけれど。
やっぱり、みんなの期待に応えないといけないという気持ちになる。私って誰かに何かを間接的に教えることは多くても真面目に教えるのは初めてです。
「先ず、気功法について解説します」
「はい!」
「薫さん、どうぞ」
「私や剣心が聞いても大丈夫なの?何だか秘伝や奥義に関わる技術なんじゃないの?」
「概ね正解です。でも一定の気力を越えている人は誰でも使える技術ですから、薫さんが危惧している事は問題ないです」
そう言って私は幾つか掛け軸を用意する。
分かりやすく教えるために色々と準備していますが、此方はしとり達にも分かりやすく解説するためです。左之助さん達は理解力もありますから、少し話せば分かってくれるはずです。
『高飛車』『低姿勢』
「気功法の基礎は『気の持ちよう』です」
「気の持ちよう、でござるか?」
訝しげに緋村剣心は私を見つめる。
「例えば左之助さんは『気が強い』ですよね」
「そうね」
「そうでござるな」
「オイ」
「気功法に言い換えると『気が強い』という事はそれだけ強力な攻撃を行える事を意味します。反対に私は『気が弱い』ですから、気功法は使えません」
まあ、獅子咆哮弾は例外ですけど。
「八宝斎君は『勝ち気』という強い気を飛ばして左之助さんを押し退けた訳です。しとりは『やる気』で竹刀に気功を纏っていました」
「成る程、だから『気の持ちよう』なのね」
薫さんは私の言葉に納得してくれた。
「『強気』を持てば『強い気』を撃つ。対して『弱気』は気功法を使える『気力』は持てないわけです。剣客に分かりやすく言えば剣気を纏えば木の葉や木々を斬る事が出来る状態に成ります」
「おお、あれか」
「えっ、弥彦も使えるの?」
「あの木の葉が斬れる現象はこれでござったか」
「剣心!?」
まあ、そういう反応になりますよね。
私も初めて見たときはビックリして腰が抜けてしまいましたし、左之助さんは気合いで吹き飛ばしたりしますので、今は少しだけ慣れたかも知れないです。
「じゃあ、オレにも使えるのか?」
「使えますよ」
明神君の言葉を肯定する。
「使い方教えてくれ、しとり」
「ん!ぎゅってしてね、ぼわってするの!」
しとりはかわいいですね。