「付き添いですか?」
「景の絵草紙を気に入っているらしくてな。どうしても会いたいからって無理やり交易に食い込んできやがった。あのクソガキはぶん殴る」
「二人の教育に悪いですよ、左之助さん」
「ん、すまねえ」
しかし、どの絵草紙のファンなのでしょうか。
志々雄真実も愛読者だったとは聴いていますし、地獄門の時も全巻寄越すように頼んでいましたから、そういう類いの方ななのは分かるけど。
直接買いに来ずに左之助さんを頼むなんて怪しい。何処の誰が私に会おうとしているのかしら?と首を傾げつつ、しとりとひとえの事を見つめる。
ふたりは気功法の練習に勤しんでいる。ひとえに強く遺伝している『特典』と神酒の影響を緩和するために気功法を覚えて、肉体の補強をしようとしているのは理解しているものの。やっぱり前回みたいに気功が弾けてしまわないかと不安になる。
「明日にでも会いたいんだとさ」
「いきなり過ぎますね」
「断るぞ」
まあ、当然の反応ですね。
私は左之助さんの言葉に頷き掛けたところで障子を突き破ってきた矢を目で追う。手紙を括り付けて、時代劇でもあまり見ないですよ。
「……コホン。前略、相楽左之助殿。我が九能家のお誘いを受けて戴き、感謝する所存。つきましては御足労してもらうより来訪する方針に変わったことをお伝えします」
「どっかで覗いてやがるな」
キョロキョロと私も塀や壁の方を見て矢を射った人を探すけれど。そう簡単に見つかるわけもないので、しとり達の方に視線を向けると地面に頭が生えていた。
左之助さんも気付いたのか、二人を拾い上げて居間の中に戻るなり、私にしとりとひとえの二人を預けて頭だけの人を警戒している。
「フハハハハ!初めましてと言っておこう!私の名前は九能!少し遠いところから会いに来た次第だ!糸色景殿、是非とも私の妻にな゛っ」
手加減なしの二重の極みを脳天に受け、「くのう」と名乗った青年は縁側に登る前に地面にめり込み、ピクリとも動かなくなってしまった。
「川に捨ててくるわ」
「えっ」
ズルズルと気絶している青年を引き摺って、左之助さんは家の敷地を出た瞬間、白煙の吹き出す光景、煙の中で起こる火花に忍者の予感を感じ、二人を抱き締める。
また、私に関わる感じのヤツですね。
しかし、どうして私は変態さんに好かれるのだろう?ドクトル・バタフライに変なお薬でも仕込まれているのかと不安を抱きつつ、着流しの破れた無傷の左之助さんが帰ってきました。
「えと、おかえりなさい?」
「おう」
全員に勝って帰ってきたんですね、流石です。