剣心の放つ飛天御剣流「龍槌閃」を刃筋をずらして往なしきった瀬田の剣才は下手したら剣心より上かも知れないとオレは感じ始めている。
この先に志々雄真実がいるってのに、最後の十本刀がここまで強いのは予想外だが、もしも剣心が負けたらオレがアイツを倒して志々雄真実を倒す。
「
「速ェ…!?」
「ぐッ…アァアッ!!」
さっきまで見えていた瀬田の動きが霞のように消え去り、オレの目には映らない速さで駆ける瀬田の動きを経験則で予測し、致命傷を避ける剣心の肩や横腹に刀傷が刻まれ、だんだんと畳を蹴る音の重さが増していく。
その音と動きを予測して逆刃刀を横薙ぎに振るう飛天御剣流「龍巻閃」が瀬田の背中に当たる。
が、剣心の背中にも同じく瀬田の刀が当たり、二人の身体が衝撃に押されて傾き、切っ先を地面に突き立て倒れることを拒む。
「…強いなあ…緋村さん…これだけ強いのに、なんであの時僕を助けてくれなかったんですか?……」
コイツと会ったことがあるのかと剣心に視線を向けるが、頚を小さく横に揺らして、オレの考えていた事を剣心は黙ったまま否定する。
「貴方は助けてくれなかった。僕を助けてくれたのは、志々雄さんだ。それなのに今更現れて、また僕を惑わすつもりですか?」
「……もし、お主の言う『あの時』をやり直せるのならば、今一度お主に手を差し出すことは出来ぬか」
「ッ……まただ、またそうやって…!…」
にっこりと微笑んでいた瀬田の顔が怒りに歪み、剣心を見つめる目付きは人斬り抜刀斎に戻り掛けていた時の剣心に酷似し、オレは力強く拳を握り、剣心と瀬田の最後の一撃を見守る。
「もう貴方の事なんてどうでもいい。この『瞬天殺』で貴方を殺す…!」
二人は刀を鞘に納めると抜刀術の構えを取る。
オレが瞬きをした瞬間、瀬田の姿が消えるが剣心には見えているのか。真っ直ぐ、一直線に駆け出していき、辛うじてオレに見えたのは逆刃刀で瀬田の身体を打つ剣心の姿だった。
「あれが、飛天御剣流奥義『天翔龍閃』か」
「宗次郎!!」
第三の間の扉を開けて入ってきた斎藤と姉ちゃん、満身創痍で傷だらけの蒼紫と佐渡島は斎藤に引きずられる形で部屋の中に入ってくる。
「…ハアッ…!…ハアッ…」
「俺のいない間に随分と傷を負った様だが、その身体で志々雄真実を本当に討てると思っているのか?」
「馬鹿めッ!!志々雄様は抜刀斎ごときに負ける様な御方ではない!!」
斎藤の問いかけに傷だらけの佐渡島が反論するが、全てを無視されてしまい、蒼紫は鎖帷子を外したのか。ゆっくりと歩いて剣心のところに向かう。
「残りは志々雄真実のみ」
「その身体で殺れるのか?」
「なんとかする。そう約束したでござるよ」
そう言って剣心は逆刃刀を鞘に納め、次の間へと向かって歩き出す。