お義父さんの帰省を促す手紙を受け、私達は長野県信州市へ向かっています。以前より神酒のおかげで体力は付いている筈なのに、くるしいです。
「ひいっ、ひぃ、ふんっ…けほっ」
「母様、がんばれ!」
「かーしゃま、ふらふらしてう」
「だ、大丈夫だから、前を向いて…ね?」
フラフラと情けない足取りで前を歩くしとりとひとえに声を掛けつつ、私は手を握って倒れないように見守ってくれる左之助さんに申し訳なく思う。
本当ならひとっ走りで左之助さんは迎えるのに、私のせいで三人に鈍牛のような歩みを課しています。もっと体力を付けたいんですけど。
どうしても体力を付けるより、体力が尽きる方が運動を始めてから増えている気がする。ドクトル・バタフライに移動する速度を早めるひみつ道具をお願いしておけば、こんなことにはならなかったのだろうか。
「景、またおぶるか?」
「い、いえ、これはしとりとひとえに母としての威厳を示す機会なんですっ。せめて街道まで辿り着ければ……その、お願いしてもいいですか?」
「……しゃあねえな、分かったよ」
私の手を握って転ばないようにしてくれる左之助さんの優しさに申し訳ない気持ちになりながらも、しとりはひとえと手を繋いで楽しそうに話している。
「ん!母様、お団子屋さん!」
「まだやってたのか」
失礼な事を言う左之助さんの手をペチペチと叩きつつ、七年ぶりに訪れた私達に目を見開き、カラカラと笑って「今度は子連れかい!」と店主のおじいさんは言いながら、お座敷に案内してくれた。
「お団子!」
「五人分、団子頼む」
「おう。少し待ってな」
「父者、私の分もすまないな」
個魔の方は嬉しそうに、しとりの影から出てくるとお座敷の脇に腰掛ける。ひとえは少し寂しそうに自分の影を見ながら「そーちゃんまだかなあ……」と呟く。
ソウタロスは早く帰って来て下さい。前の契約者も大丈夫でしょうけど、ひとえを悲しませた分、しっかりと貴方が優しく遊んであげてほしいです。
「嬢ちゃん達が先だぞ。鉢巻き坊主」
「坊主って歳じゃねえよ」
「ワシからしたらガキじゃい!」
「ヘッ。ならオレが爺になるまで生きとけよ」
売り言葉に買い言葉なのに、お互いの長生きを望んでいるように聴こえます。いえ、そうですね。みんな、少しでも長生きしてほしいですよね。
私はそう思いますし、そうありたいです。
「しかし、あの嬢ちゃんが母親か。長生きしてみるもんじゃでな」
「……はい。私もビックリです」
あの頃の私はずっと一人だけだと思い込んでいた。