「やあ、じいじだよ!」
「
「上下ェ門、同じお爺ちゃんだろう?」
ガタガタと戸を隔てて押し問答を繰り返すお父様とお義父さんの二人を見て、クスクスと楽しそうに笑うしとり、その後ろに隠れて言い争う二人をワクワクと見つめるひとえの二人に思わず、苦笑してしまいます。
「相変わらず不仲なのか」
「ウチの主人が悪いわね。しとりは久しぶりになるけれど、次女の方は初めましてになりますね。貴女の祖母、おばあちゃんの糸色頂と申します」
「ん!ひーちゃん、ばあ様!」
「ばーしゃま?」
いつの間にか家の中に入ってきていたお母様はしとりとひとえに挨拶を済ませると直ぐに私の顔を両手で包むように掴み、ゆっくりと腕を首に回して抱き締めてきた。
突然の事に驚くことも忘れて、ただただお母様の抱擁を受け止めることしか私には出来なかった。
────けれど。怖くも不安もなく安心できるお母様の温かさに抱き締め返して、しっかりと聴こえるお母様の心臓の音を聴き、安堵してしまう。
ああ、よかった。
私と違って、お母様は大丈夫なんですね。
「景、掛かり付けのお医者様に聴いたわ。もう東京なんて遠い場所に居を構えず、糸色家に帰って来なさい。幸い、ここに家族全員で来ているのですから」
「……ごめんなさい。お母様の気持ちは痛いほどに分かります、それでも此方に戻ることは出来ません。ですが、少しだけお側に居ます」
左之助さんに少しだけ滞在しても良いのかを訊ねて、私とお母様が安心して語り合える時間は幾らでもあった方が言いと言ってくれました。
やっぱり、左之助さんは優しくて素敵な人です。もう会えないかも知れないという不安もありましたから、こうしてお母様とお父様と過ごせるのは幸せです。
「良いから入れろって!」
「嫌だつってんだろ!?」
「左之助君もウチの主人や父親に似ちゃ駄目よ?姿ったらまさか家督を継がずに本条家に婿入りして、何故か此方では嫁入りもしたのよね」
まあ、そういう突拍子もない現実がありますから。それに姿お兄様は愛する人を想い、如何なる苦行苦難も容易く斬り伏せる人ですし。
「ちなみに四兄弟だそうよ」
「よっ、よん?」
「負けてられねえな」
「え?」
何故か対抗心を燃やす左之助さんが帯と着物越しに私のお腹を撫でてきて、いきなりのことに困惑していると「この狼藉者っ、娘に不埒な真似はお止し!」と彼の手の甲を叩き、お腹を擦る手を止めてくれた。