お母様の提案を受け、私達は糸色家の屋敷に何日か泊まることになりました。元々私の使っていた部屋はそのまま残していてくれたらしく、画材や着物も手入れはされているけど。
昔使っていたときのままです。
「私の描いた絵もこんな…?」
どうして、こんなものが私の部屋に?
そう不思議に思いながらも絵を見続けていたとき、視線を感じて部屋の端に置かれた鏡台に視線を向けたその時、私はあまりの恐怖にビクリと身体を震わせる。
───
』ねえ、そっちに行きたい『
ゾワリとした。彼女の言葉は逆さまなのに、ハッキリと「ねえ、そっちに行きたい」と呟き、私の方に手を伸ばしているのが見えた。
うごけな、たすけ…
「ん!こまちゃん!!」
「全く、世話の焼ける母者だ!!」
その声と共に飛び出してきた個魔の方の振るう蹴りが鏡の外に出掛けていた私の顔にめり込み、そのまま鏡の奥に蹴り返してしまった。
今のは、なんだったんでしょうか?
「今のは鏡像の相楽景だろうな」
カシャッとシャッターを切る音が聴こえて、庭の方に顔を向けるとさっきまで枝の剪定を行っていた人が此方に二眼レフを構えていました。
思わず、彼の顔を二度見してしまった。
「桃色の着物?」
「桃色じゃなくて、マゼンタだ」
その言い方と仕草は知っています。
しかし、こういうときは知らないふりをしましょう。いえ、ほもそもご本人というのかも怪しいですし、何より私の知っている彼かも分からない。
「景、どうかし、桜色の着物?」
「桜色じゃなくて、マゼンタだ。全くシンケンジャーの次はタイムスリップしたかと思えば糸色景、相楽左之助の二人に会うことになるとはな」
そう言うとまた二眼レフを構える彼に左之助さんは瞬発的に攻撃を仕掛ける事はなく、静かに私の隣に座ってピンク色……マゼンタの作務衣を着た彼を見る。
……マゼンタの作務衣とは?
いえ、そういうものがあるんですよね。
私には分からないけど、きっとそういうものが未来では流行っているのでしょう。できれば、もう少しだけ落ち着いた色合いが好きなのですが、お父様風に言えばハイカラなのかも知れません。
「で、だれだ」
「通りすがりの庭師だ。覚えておけ」
「庭師とは思えねえ態度の大きさだな」
それは、そうかもしれませんね。