自称・通りすがりの庭師による少しだけ変わった実家生活を送っている私の近くには「鏡像の糸色景」や「偽物の糸色景」なんていうものも現れる。
しかし、その全ては私に成り代わる事を目的とし、あらゆる工作を用いているようです。一度、人形の私と生活していた左之助さんは直ぐに見分けることが出来るらしく、何処か高揚感を抱くように「偽物の糸色景」を殴って追い返しているところを見てしまいました。
「何体居るんだ。お前の偽物」
「えと、さあ?」
お父様やお母様、お義父さんと楽しく遊んでいるしとりとひとえの姉妹を眺めつつ、ゆっくりと仕事に没頭できる私に疲れ気味に問い掛けてくるのは庭師です。
やっぱり彼は「門矢士」なのでしょうが、まだ確定している訳ではないですし。なにより私の知っている門矢士より力強さを感じます。
「楯敷の狙いも大体分かった。だが、お前の事を狙っているヤツが多すぎるのも事実だ。あの殿様が面倒臭かったのもお前の影響だろうな」
「殿様、ですか」
本当に私の子供が殿様になるんですね。いえ、予測ではないけれど。そういうものだと理解しているところは幾つかありました。
─────ですが、本当に私に集まりますね。
「……ところで、そちらはご友人ですか?」
「友人?」
「やあ、お世話になっているよ、士」
「海東っ、また来たのかこそ泥め」
「失礼だな。僕の目的は彼女さ」
指鉄砲に揃えた右手を軽く振る青年の言葉に困惑しながら慌てて袖の中に仕舞っているものを幾つか手探りで確かめて、ほうっと安堵の吐息をこぼす。
良かった、盗まれていません。
「成る程、其処にあるのか」
「女の服に手を入れるつもりか?」
庭師の言葉に近づこうとしていた歩みが止まり、ウンウンと唸り始める青年───海東大樹の表情は悩ましげに歪み、どうしようかと真剣に悩んでいます。
「景、また絡まれてたのか」
「あ、左之助さん、別に絡まれているというわけではないんですよ?世間話をしているだけで、悪いことをしているわけではありませんし」
そう言って擁護する言葉を呟くと左之助さんは不満そうに私の隣に座って庭師と海東大樹の事を睨む。なんだか左之助さんの独占欲が強まっている気がします。
いえ、元々我慢していたものが爆発して発露していると考えれば仕方ない事なのかも知れないですし、そういうものを沢山我慢していたのかもしれない。
……なんだか申し訳無いです。
「(左之助さん、どうしたら満足してくれるのかしら?)」