左之助さんのお説教を受けた後、私はしとりとひとえを連れて、糸色家の敷地内に在る広大な庭に画架を置き、真っ白なキャンバスを立て掛ける。
その向こう側でお花を勝手に摘んだりせず、綺麗なものを楽しそうに見つめて笑うしとりとひとえの姉妹、私と左之助さんの両親達を絵筆で描く。
やっぱり、こうしているのが一番落ち着きます。
「……?」
蛮竜が光ってる?
いえ、どうして形態変化を行っているの?左之助さんは普通の鉄の蛮竜しか使っていないのに、金剛石の刀身に変化し始めている。
不可逆性の出来事と考えるべきですね。
あの時、武藤君や賛さんが来たとき、蛮竜は何かと共鳴していた。おそらく今回も何かと……いえ、未来の子供と共鳴している。
そう確信する私の近くに現代風の装いを纏ったポニーテールのスポーティーなお姉さんが佇んでいた。左之助さんが女の子だったら、この様な感じでしょうか?
「あの、少し良い……ですか?」
「はい?」
彼女の問いかけに肯定とも疑問とも言えない言葉を返してしまったものの。しっかりと彼女の事を見つめつつ、チラリと彼女の担ぐ大鉾を見る。
「蛮竜……そう、貴女も私の子孫なんですね」
「えと、そう、なります」
どこか困った風に嗤う彼女は不思議と怖いとは思わず、むしろ賛さんや武藤君のように発展途上の力強さは感じず、完璧な個という感じがしますね。
「フフ、怖がらなくてもいいですよ」
「糸色景……さん、よね?」
「今は相楽景ですけど。そちらで覚えているなら、どちらも正解です。貴女が来たのは蛮竜を使うために左之助さん……私の夫と戦うためですか?」
「違うわ。私は今も未来で白面の者と戦っている大事な人達を助けるために帰りたいだけ」
「白面の者と戦っているの?」
私の子供達って、何処まで行っているの?と困惑しながらも、ようやく白面の者を分かって慈しんで上げてくれる子が生まれたんだと想い、嬉しくなってしまう。
優しく彼女の事を抱き締める。私より背は高くても私からしたらまだまだ子供ですから、今は少しでも安らげるように優しく彼女の頭を撫でてあげる。
「貴女は頑張り屋さんですね。いつも誰かのために動ける、今も未来に居るお友達を心配している。でも、憎しみや怒りでは白面の者は倒せないんです」
「……分かっているわ。でも、どうすれば?」
「その答えはもう貴女も知っていますよ」
「私が?」
えぇ、そうです。すでに貴女は知っているでしょう?と微笑みを向ける。
「それに、誰にもわからない様に隠し味をつけるのは楽しい。だけど、それを見つけるのはもっと楽しいことです。貴女ならきっと白面の者も助けてあげられる、そんな正解が見つけられますよ」
「……オーライ。纏めて助けてあげるわ」
「フフ、良い子ですねえ」
「当然よ、貴女の子孫だもの。それじゃあ、もう行くわね、景お婆様」
お婆様!
やっぱり子供の成長は早いものですね。でも、『うしおととら』の時代の子供ということは、彼女は賛さんか武藤君、境君のおかあさんなのかしら?
ふと、まだ名前を聞いていないことを思い出す。
「そういえば貴女のお名前は?」
「私の名前は糸色妙よ、景お婆様」
「それじゃあ妙さんも気をつけてね」
「問題ないわ。だって、私は糸色妙だもの!」
フフ、自分の名前に自信があるんですね。
それはとてもいいことです。