「景、貴女の優しさは美徳だけれど。あまりこういうものは引き合いに出すのはダメよ」
「えと、この人達は悪い人では」
ドクトル・バタフライに薙刀を突き付けるお母様にどうやって説明しようかと悩みつつ、チラリと彼の方を向けば「ふむ、癖毛や目の凛々しさを除けばそっくりだ」とお母様の事を観察していた。
そういうところをお母様は怒こっているんですよ?と少し呆れながら彼の事を見る。お友達ですから嫌いではないけど。
ちょっと変態さんぽいのは止めてほしい。
「貴方の用件は何かしら。事と次第によって貴方の首を切り落とすわ」
「私の用件は一つだけだ。糸色君、少し大変な事態を引き起こす相手と戦うことになる。君の力をもう一度だけ貸してほしい」
「いいえ、絶対に認めない。この子はもう屋敷の外に出るなんていう事は許さない。せめて、最後くらい私の傍にずっと居て欲しいの」
「奥方の気持ちを分かったと言えるほど私は感受性の高い人間ではない。私は君の大事な娘を死地に連れて行こうとしているのも事実だ。────しかし、この
「世界のため?クソ食らえだわ!私は世界よりも生きることに必死だった子供を優先する!!例え世界が敵に回っても大切なモノは守るのが母親よ!!!」
そう言って私を抱き締めるお母様の背中を優しく擦り、ゆっくりとお母様と向き合う。私も怖いところなんて行きたくないですし、このまま平和に過ごしたい。
「ありがとうございます。お母様にそう言ってもらえるだけで私は嬉しいです」
ゆっくりとお母様の抱擁を解いてもらい、ドクトル・バタフライの方を向けば少しばかり申し訳なさそうにしている。全く本当にそうですよ。
「ドクトル、お願いします」
「すまないね。マダム、彼女は暫くお預かりする」
私の手を優しく握ったドクトル・バタフライの手を左之助さんが払いのけ、ジロリと私の事を淀んで歪んだ眼差しが射貫く。
「戦うならオレを呼べば良いだろうが、どうして景の事を連れて行こうとしやがる。まさか景を傷付けるつもりじゃねえよな?」
「左之助君、緊急事態なのだ。この事態を納めるには力ではなく知恵を必要としている。正直、私だけでは足りないのだよ」
成る程、そちら方面なら私が役立ちますね。
危なくないなら問題ないですけど。
やっぱり不安なのは事実です。