左之助さんと緋村剣心、四乃森蒼紫、斎藤一が揃って無事に帰ってきたけれど。
原作と同じく瀬田宗次郎と志々雄真実という強敵を相手に連戦した緋村剣心の傷は深く、駆けつけてくれた高荷さんのおかげで一命は取り留めたのが奇跡とも言える状態だったそうだ。
「さっさと吐け」
「ひぃんっ、し、知りませんよぉ…!」
左之助さんの親友がピンチだというのに、私は京都警察署で斎藤一の尋問じみた事情聴取を受けている。なんでも私が武田観柳のところで書いていた新造兵器の設計図を元に拳銃を使う敵が現れ、四乃森蒼紫がかなり苦戦したため、その原因たる私を問い詰められているのだ。
そもそも横流ししていた志々雄真実の放った密偵を拷問しているとか聞きたくないです。怖い、やっぱり生きるのが怖くて仕方ないぃ……。
半泣きになりながら私の隣に居てくれる左之助さんを見ると「もう描いた奴見せれば良いんじゃねえか?」と言う、とんでもない言葉を言い放ってきた。
「全く、こんな小娘一人に翻弄されるとはな」
「それも景の良いところだぜ?」
「俺もソイツの才能は認めている。しかし、その臆病さに此方は悩んでいるのだ。軍部の連中が糸色景を引き渡せと五月蝿くてかなわん」
「オイ、人の女房を奪うつもりかよ」
「阿呆が。余計な事を仕出かすな」
斎藤一と左之助さんの会話を聞きながら、私の描いていた新造兵器の図案は武田観柳邸に有るものが全部であり、残っているのは『うしおととら』をはじめとした漫画だから、絶対に渡せるものがないのだと主張する。
「……ハアァ…今日は帰れ…」
そう言うと斎藤一は立ち上がり、廊下に出る。
「だとさ、帰るぞ景」
「は、はい。ご迷惑をお掛けしました…」
「っと。忘れるところだった、斎藤。祝勝会をまたやるみたいだから今度こそ顔出しぐらいしろよ」
私の手を引いて歩き出そうとした左之助さんは反対方向に歩き出していた斎藤一に、そう呼び掛けるも無視されて少し怒っている。
「なんだか色々と有りましたけど。お帰りなさい」
「おう。ただいま」
ゆっくりと左之助さんと繋いだ手を強く握ると彼も握り返してくれる。大きくて、ずっと戦ってきた彼の手は温かくて誰だろうと繋ぎ止める優しさを持っている。
「そういえば弥彦が言ってたが、あの絵襖を更にでかくしたんだよな」
「えっ、えぇ、まあ……」
「蒼紫も呆けてるのか、ちょっと楽しみだぜ」
それは、楽しみにしていいのかしら?
そう私は疑問を抱きながら左之助さんと一緒に「白べこ」で祝勝会をまた始めている御庭番衆の方々と神谷さん達の事を想像して、クスクスと笑ってしまう。
生きるのは怖いけど、彼がいるなら大丈夫だ。