不破信二のお願い事を聞き、私とドクトル・バタフライは彼の生家に「どこでもドア」で向かい、必要な物だけ不破信二に取ってきてもらい、カリカリと万年筆を書類の上に走らせる。
しかし、本当に随分と怖い案件ばかり。
私でも知っているような事件の依頼まであるのですが、知らない振りをしていたほうが良いですよね。不破信二は同じ転生者ですけど。
その他は不安な要素もありますし。悪い人じゃないのは分かるけど、左之助さんをあんな風にしたのは未だに酷いと思っていますからね。
「不破さん、此方の書類の拇印は?」
「ああ、俺ので大丈夫だ」
「じゃあ、この二十枚にお願いします」
「信二君、それが終わったら此方に名前を書いて貰えるかね。三十一枚あるから書き間違えないように頼むよ。修正は面倒だからね」
「お、おう」
山積みの書類を書き終えて、あとは不破信二の書名を貰えれば問題ない段階に進んだのに、彼はすごく書くのが遅い。いえ、戦いに明け暮れる修羅だから、それも仕方ないのかも知れないけれど。
「景、オレは子守りだけでいいのか?」
「左之助さんは傍に居てくれるだけで良いんです」
「オレもお前が傍に居てくれるだけで良いぞ」
そう言って貰える嬉しさに頬を緩めつつ、稽古を終えて帰ってきたしとりは「ん!あかちゃん、しとりもあやす!」とお手伝いを率先してやってくれます。
しかし、本当に子沢山ですね。
奥さんが猫溺泉に落ちてしまっているから、そういう風になっているのは分かります。園田君や百合さんの話していた男の人みたいに女傑族の隠れ里に送ったら、どうなるのか気になりますね。
「なんか悪寒が…」
「肌寒くはないのだが、子供の健康を考えると長時間の仕事は止めておこう。糸色君、私も手伝うから子供を温かい場所に移動しようか」
「しとりもやる!」
「むうぅ、ねーしゃま、とっちゃや!」
「ん!?ん!ん!」
「あらあら、寂しかったんですね」
ぷくーっと頬っぺたを膨らませてしとりに抱きついているひとえの頭を優しく撫でてあげ、私のお膝の上に乗せて抱き締めてあげる。
「お姉ちゃんが取られるかもと不安だったんですね。大丈夫ですよ、しとりはひとえが大好きですから赤ちゃんに取られたりしませんから、ね?」
「……ぅん、ごめんね?」
赤ちゃんの頭を撫でて謝るひとえの事を褒めてあげながら、一緒に風避けにも暖房にもなってくれるスネコスリの親分のところに連れていく。
「お願いできる?」
そう聞けば、フスと鼻を鳴らして親分は大きくなってくれた。フフ、良かったですね。