ドクトル・バタフライの用意してくれた『どこでもドア』を潜り、彼の待つ屋敷に入ると既にススハムと不破信二は集まっていた。
「お久し振りです、ススハムさん」
「えぇ、久しぶりね。相楽カッケマッ」
ヒラヒラと手を振ってくれた彼女の隣に座り、安居院さんや幻想虎徹がいないことに首を傾げる。「彼」もまだ身体を取り戻していないから、もう二年以上お話しもしていないですけど。
「さて、集まって貰った訳を話そう。楯敷ツカサがショッカー戦闘員を送り込んできた。おそらく本格的に糸色君の身体に宿っている力を奪いに来ている」
「ソイツ、アタシのところにも一回だけ来たわよ。ワームの身体にカードで変身していたけど、あんなの普通に考えてやるもんじゃないわ」
「俺だけ会えてねえのか。仮面ライダーと殴り合ってみたい気持ちもあるんたけどな」
そう言って不貞腐れながらドクトル・バタフライの用意してくれたお茶菓子を頬張る不破信二。さっきまでショッカー戦闘員と戦っていたのに、よくそんなにいっぱいお菓子を食べられますよね。
しかし、楯敷君がずっと欲しがっている私の『物語を繋げる能力』を奪われてしまえばもっと危険な世界になるのは事実です。
だからこそ、私は逃げないといけない。
「ふむ、本人自ら来たようだね」
「え?」
「タイミングを見計らってたわけか。ススハム、糸色連れて離れててくれ」
「信二、また無茶したらカッケマッに言いつけるから、猫の嫉妬は欲深いわよ」
「折角来たんだから歓迎してくれよ。景も久しぶり、ようやく会えたな」
当たり前のようにドクトル・バタフライの真正面に立つ楯敷君。不破信二もススハムも動かずに彼らの行動を見守りながら、いつでも動けるようにしている。
「用件は何かね」
「ちょっとしたお披露目だ。景、コイツが何かお前なら分かるよな?」
そう言うと楯敷君は胸に手を当てて何かを取り出す。光る宝玉?と思うも何となく理解できた。
「私の『物語を繋げる能力』と『前世の記憶の保持』にサンピタラカムイ様の神酒の加護が混ざり合ったものですね。どこでそれを?」
「正確には『並行世界の転写』だがな」
どこか楽しげに話す楯敷君の言葉の意味は理解できる彼は未来に居る私の子供から力を奪い、それを見せるためにやって来たというわけだ。
その子が無事だと良いんですけど。
しかし、楯敷君の手に入れた『並行世界の転写』。アレは下手に使われると倒すのも難しくなるどころではありません。アレは無尽蔵にエネルギーを取り込め、怪我も負っていない自分に上書き出来る。
「流石に『物語を繋げる能力』には程遠いぜ?だが、お前の子供に良いものを作って貰った」
ゆっくりと彼が取り出したものに目を見開いてしまう。本当にどこまでも悪に徹する人だと身体が震え、彼の待つケータッチに顔を青ざめる。
「楽しく、遊ぼうぜ。オレとお前の勝負だ」
「……どうして、そこまで私に固執するの?」
思わず、そう問い掛けてしまう。
「お前の力が欲しいからに決まってるだろ?」
「…………」
知らない。
そんなの、聞いていない。ススハムの腕を掴みながら、過呼吸になって苦しく痛み始める胸を押さえて、ゆっくりと楯敷君の事を見上げる。