「ほら、行くわよ」
「は、はい」
「何処に行くんだ?」
「ほんっとにしつこいわね」
アロハシャツを着た壮年の男性、立花ゲンジロウの登場に私は恐怖を抱く反面、ススハムは心底面倒臭そうに彼の事を睨み付けている。
ススハムは仕方ない事だと割り切って、私を見捨ててしまえば逃げることは出来る。それなのに逃げないどころか私の前に立ってくれている。
私にも何か出来ることがあるはず、そう思ったものの怖いものは怖いから動けない。
「グロンギに生身で勝つ強靭な身体か。ツカサのヤツが気を付けろって言っていた意味がようやく分かった。が、俺には勝てないぞ」
「そんなのは百も千も承知しているわよ。でもね、負けるからって大事な友達のピンチを見て見ぬふりするわけないでしょう」
「流石はアイヌの巫女だな。妖怪変化までお前に味方してやがる」
「どっちかと言えば相楽カッケマッに味方しているだけよ。この子は変なのに好かれやすいから」
そう言うとデスガロンに変身せずに殴り掛かってきた立花ゲンジロウの右フックを、ススハムは半歩退いて仰け反るように躱し、サマーソルトキックを彼の顎に二連続で見舞い、着地した。
「イテテッ。やるな」
「よく言う……アタシの足首、折ろうとしたわね」
「え、だ、大丈夫ですか!?」
「平気よ、平気よ。こんなの慣れっこ」
笑顔を向けてくれるススハムの顔色は悪く、明らかに無理をしています。どうにか誰かに助けを求める方法があれば良いのにっ。
「糸色景、アンタなら解決法はもう理解しているだろう?ツカサが向こうに居る以上、ドクトル・バタフライも不破信二も来る事は出来ない」
「……確かに、そうなんでしょうね。でも、まだ私にも手段は残っているんです」
ショドウフォンを取り出して宙に絵を描く。
真っ暗な月明かりに照らされた姿は黒く、緑色の装甲、赤い複眼を持ったデスガロンにとって、最も危険と感じる存在を一時的に呼び寄せる。
しかし、あくまで呼び寄せるだけ。
本人の確証も無ければ、私達を助けてくれるのかも怪しい。それでも暗黒結社ゴルゴムとクライシス帝国の力を持つデスガロンを倒すには彼が必要になる。
「貴様は、仮面ライダーBLACK RX!!」
どこか嬉しそうに叫ぶ立花ゲンジロウは命の石を搭載したベルトを出現させ、デスガロンへと変身を遂げる。すでに彼の視線の先は宿敵のモノになっている。
今のうちに逃げておかないとです。
「……ものすごく不満だわ」
「す、すみません、でも、これが一番だと」
そう言いながら私は逃走を再開する。