ゆっくりと仮面ライダーディケイドの目の前に立つ男性は両手を覆う手袋の中指を噛み、一気に両手を引き抜いて月明かりの中にさらけ出す。
銀色の五指。コイル巻きの手。
「
その両手を擦り付け、火花を散らした瞬間、彼の身体は仮面ライダーに酷似したモノに変化していく。不完全に伸びた赤い角、つり上がった緑色の複眼、大きく隆起した胸部と肩部の装甲、胸の真ん中に刻んだ「S」の文字に私は目を見開いてしまった。
「仮面ライダーストロンガー?」
「違う、違います、アレは…!」
仮面ライダースパーク、あるいは奇怪人スパークと呼ばれる『仮面ライダーストロンガー』に名前を変更する以前の存在、言わば「仮面ライダーストロンガー」のプロトタイプの存在です。
あり得ない。
いえ、あり得るのだとしたら向こう側の世界は此方より過酷な世界なのかも知れない。元々そういう予感や推測はしていたんです。
「糸色、お前が何を知っているのかは知らないが少なくとも今だけはアンタを守ってやる」
「破壊者が、正義の味方気取りか!」
そう言うと同時に二人は駆け出し、お互いの拳をぶつけ合い、地面に大きなクレーターを作りながら、パンチやキックの応酬を繰り広げている。
ススハムのおかげで衝撃波の余波を受ける前に離れることは出来たけど。もしも、あそこに立っていたら私は確実に感電死していたか、衝撃波で内臓を潰されて死んでいたでしょうね。
「はあっ!」
「電チョオォップ!!」
バリバリと赤雷を纏ったチョップを繰り出す奇怪人スパークの一撃をライドブッカー(ソードモード)で受け止め、放電する電撃より速くススハムは飛び退き、それでも飛来する電光を小刀を投げて防ぐ。
私だけが、お荷物です。
「ぐっ、流石に雷相手はキツいか」
「あら、変わってあげましょうか?」
「断る。ユウスケと海東、園田も別の奴らを相手にしているときに一人だけ楽するつもりはない。それに、こいつはオレを狙っていたらしいからな」
そうだ。そうです。
確かに、ハッキリとそう言っていた。そのことを私もススハムも思い出して彼の事を見据える。私達に彼の目的を知る手段はない。
いえ、そもそも彼らの狙いは私の『物語を繋げる能力』であり、その力を奪えば自由に世界を拡張し、世界を渡って多次元世界を支配できる。
稚拙な考えだけど。
これが一番しっくりと来てしまう。もしくは、私の力を誰かに押し付けて、何かに使おうとしているという可能性もあり得ます。