「あー、身体中痛てえな」
ゴキゴキと関節を鳴らす不破信二の何事もなかったかのような態度にススハムは怒って脛を蹴っている。痛いところを的確に蹴った筈なのに、ススハムのほうが負けて足を押さえています。
硬すぎて蹴った方が痛かったアレですね。
楯敷君も流石に止まりましたよね?と彼の座っていた場所を見る。けど、そこにはブランク状態のカードが一枚だけ置かれ、楯敷君の姿は消えていた。
「逃げたな、アイツ」
「門矢君、危ないですよ」
「問題ない」
そう言うと彼はブランク状態のカードを手に取るとポケットの中に仕舞ってしまった。私も少し興味はあったんですけど。門矢君が持つなら大丈夫ですね。
私は怪我を負った左之助さんを頑張って支えつつ、ゆっくりと座れそうな瓦礫に彼を座らせて、袖の中に仕舞っていた消毒液をハンカチーフに染み込ませて、彼の顔や腕の怪我を丁寧に拭く。
わざと手の傷を拭けないように腕を上げる左之助さんに苦笑を向けて、彼の肩に手を置いて、そのまま手を伸ばしてハンカチーフを動かす。
「んッ。左之助さん、擽ったいです」
「おお、悪いな」
ちっとも反省していない顔で私の腰を掴み、お膝の上に座らせる彼に首を傾げ、止血用の軟膏を縫ってガーゼを被せ、包帯で固定する。
「で、ドクトル、ずっと前から景と夜な夜な会ってたんだな。どういう理由があったのか。洗いざらい、ここで話してもらおうか?」
「話すも何も君も知っているだろう。私は糸色君の定期検診を行っていただけだ。夜になったのは私用で遅れたから仕方なくだよ」
「定期検診?」
私の方を見下ろす左之助さんにコクコクと頷きつつ、うなじを触る手がもどかしくて、ススハムに助けを求めるも舌打ちをされた。
なぜ?と困惑する私に「アタシもさっさと帰りたくなってきたわ」と呟いている。……成る程、鷲塚慶一郎に会えなくて寂しいんですね。
分かります、私も寂しいんですから。
「左之助、怪我治ったら再戦な」
「二度とするかよ。この阿呆が」
「つまんねえなあ」
いえ、つまらないではなく夫を怪我させないでほしいです。貴方も父親なんですから、子供のために強くありたいと思うのは分かりますけど。
「もう妖怪変化しちゃダメですよ?」
「へんげ?」
「……貴方、まさか自分が鬼に成りかけてたの気づいていなかったの?」
「お、おお、ススハムもそう言うのか」
ススハムは本気で彼に呆れて、ドクトル・バタフライも流石にフォローできず、蝶のお髭を触って苦笑を浮かべているだけです。