やっぱり楯敷君の行動は無くなっている。
私を狙っていた事は知っていますし、まだ私の身体の中に『物語を繋げる能力』は残っている。あの時も逃げずに私に向かってきていたのも何かしら理由があるのは間違いないんでしょうけど。
その理由も答えも見つからない。
可能性の一つとしては、ドクトル・バタフライによって機能停止してしまったダークディケイドライバーを修復するために交さんに接触している、あるいは誰か別の人に頼んでいるかのどちらかですね。
しかし、本当に彼のやりたいことが分からないです。物語を繋げて何をしようとしているのかさえ分かればドクトル・バタフライに頼めるのに……。
「景、どうかしたのか?」
「え?ああ、いえ、考え事です」
「そうか。なにかあったら言えよ?」
「ありがとうございます」
ずっと集中して考え込んでいた私の腰を抱き締め、自分のお膝に座らせてくる左之助さんにビックリしながらも手帳に書いている「楯敷ツカサの目的」と「不破信二の変化」など書いている文字を見られてしまう。
でも、これはバレても問題ないです。
本当に危ないものはしっかりと頭の中に残っているから安心安全です。ドクトル・バタフライなら頭の中も簡単に覗いてきそうですね。
不可能とか大嫌いらしいですし。
「他には何を書いてるんだ?」
「しとりとひとえの似顔絵です」
そう言って私は手帳の一番前に書かれたものを見つめる彼の視線は怪しいものを見るようなのから笑顔に代わり、ほうっと安堵の吐息をこぼす。
「んッ…何するんですか」
うなじに小さな衝撃を受け、肩口に噛みつく左之助さんの頭をペチペチと叩いて抗議をする。しとりは神谷道場に稽古に言っているけど、ひとえも居るんですよ?
破廉恥なのはいけませんっ。
「左之助さん、左之助さん」
「なんだ?」
「ひとえが見てますよ」
「父ちゃんは何も悪いことはしてねえぞ」
「かーしゃま、ほんと?」
「フフ、さあ。どうでしょうねえ?」
彼女の問いかけに曖昧に答えつつ、手帳を閉じて万年筆と一緒に袖に戻す。
「そういえば、八宝斎君の話を聞きましたか?」
「また、あの助平小僧がやらかしたのか」
「いえ、武者修行のために交易船に乗って清国に行ってしまったそうなんです。久保田さんが乗り込むところを見ていたらしくて」
「……流石に死ぬことはねえだろうが、そう簡単に清国で生きていけるのか怪しいぞ。だが、まあ、助平小僧なりに強くなるために選んだ道だ。オレ達がとやかく言う義理も理由もねえからな」
そう、ですね。
次に会うときはいつになるのか分からないけど。無差別格闘流を強く構築し、より実践的になっていることは間違いない。