ドクトル・バタフライの招集を受け、何事かと不安に思いながらも左之助さんとしとりとひとえ達を連れて、彼の指定した茶屋の二階に上がると不破信二がいた。
「…今度は何しでかしやがった?」
「まだ何もしてないんだがなあ」
今の言葉は身から出た錆というやつですね。いつも不破信二の危なく恐ろしい修羅としての姿を知っていると左之助さんの反応は正しく思えます。
実際、彼の行動で大変になったこともありますし。危険な行為は常に控えて欲しいと思う。いえ、本当に控えて貰わないと奥さんや子供達が大変になる。
「で、景を呼んだ理由は何だ」
「そう急く必要はない。信二君の事もそうだが、今回は糸色君の定期検診についてだ」
「景の検診か…」
怒気は霧散して悲しげに私を見下ろす彼の手を握り、にこりと笑みを向ける。大丈夫です。ドクトル・バタフライと恵さんの作ってくれたお薬で咳や吐血は収まっていますし。
もうすぐ、しとりの初めての冒険が始まるんですから邪魔になるようなことは出来ませんよ。私は母親で、大切な子供の成長を妨げる事はしたくない。
辛くても、苦しくても、大丈夫ですから。ね?
「信二君、例の物を出して貰えるかね?」
「おう。糸色、俺が持ってきたのはコイツだ」
そう言うと不破信二は妖気を纏った欠片を取り出す。四魂の欠片。また、私達のところに送り込まれてきたの?と不安を抱きつつ、不破信二を見つめる。
「いや、此方じゃねえな」
「おっと……全く君くらいだよ、四魂の欠片をこんな雑に扱っているのは」
「おお、あったあった。コイツだ」
今度取り出したのは古びた巻物でした。
随分と古めかしく触れてしまえば崩れるかも知れないと不安になる物ですけど。一体、何を記したものなのでしょうか?と首を傾げる。
「清国に伝わる特殊経絡図と気功健康法の基礎を記した指南書だ。いやー、女傑族の里で貰ってたのをすっかり忘れててな」
ハッハッハッ!とドクトル・バタフライのように笑って誤魔化す不破信二に左之助さんは深く溜め息を吐いて、彼から巻物を受け取る。
「一ヶ月、根気よく
「ツボの位置は私が教えよう。ただ、問題点は糸色君の虚弱すぎて貧弱な上にひ弱な身体がこの施術に耐えられるのかが不安なのだ」
「…いつも通りですよ。いつだって私はそういうもう少しという狭間にいますから、誰かに寄り添っている分、その危険性も理解しています」
「……そうだったね。左之助君、今回は妻の覚悟を信じたまえよ。危ないと思ったのなら、君が止めて安全なツボを押すようにすればいい」
そうドクトル・バタフライは告げる。