「…んッ…ぃぎ…ひぃ…!」
「糸色君、うるさいよ」
背中のツボを押すドクトル・バタフライの言葉に言い返したいけれど。痛みによって叫ぶことも出来ず、呻くように声を漏らし、私の目の前に座っている左之助さんにしがみついて耐えるばかりです。
あと一ヶ月もこれを続けるの?と涙を流しながら背中の経絡神経を突くドクトル・バタフライの親指の圧に耐えきれず、バタバタと足を動かすものの。私の力では押し退けることは出来ませんでした。
「さの、さのすけしゃ…!」
「……こう、来るものがあるな」
「母様、がんばれ!」
「かーしゃま、えらいよ?」
自分の娘達に醜態を晒している事実も相俟って羞恥心で身体が燃えてしまいそうです。私の身体を健康的に保つためとはいえこんなの無理ですっ。
「今日の診察はこのくらいだろう。しかし、あまり無理に続けるのは身体に負担を掛ける。左之助君、君は馬鹿力だから優しくしてあげるように」
「おう。帰ったら直ぐにやるか」
「ひぃ…!」
にんまりと笑っているのに何故か怒ったように感じる左之助さんに短く悲鳴を上げ、私の素肌に何かを書き込み、印を付けるドクトル・バタフライにも驚きながら、彼の方に腹掛けを着けたまま首だけを向ける。
「な、なにしてるんですか?」
「何って左之助君が押しやすいように正確な位置を書き記しているんだよ。直ぐに覚えるのは難しい。安心したまえ、特殊なインクを使っているから身体を洗っても消えることはない」
いえ、それは安心できませんよ!?
「オレも景の身体に書いとくか」
「うむ、愛する物の名前を書いておくというのも良いかも知れないが、これは彼女の健康のためだからやめておいてくれるかね?」
「チッ。景の身体にオレ以外の何かがあるのがモノスゲぇ不満はあるが、長生きして貰えるなら我慢してやる。あとでぶん殴るが、許してやる」
「君は本当に独占欲の強い男だな。紳士たる者、余裕と慈愛を向けるべきだぞ?愛想を尽かすことはないだろうが、彼女の事を束縛するのはNonsenseだ。さて、私は診断書を書いてこよ
う」
そう言って高らかに笑うドクトル・バタフライは私の背中に乗っていた身体を退け、部屋の外に出ていく。やっと、終わってくれた。
「…………あの、左之助さん?」
「なんだ?」
「着替えるので出ていって貰えると…」
「いつも見てんだから気にすんなって」
しとりとひとえは残っても良いですけど。施術後ですごく疲れているし、恥ずかしいからとお願いして部屋の外に出ていって貰えました。
ほんとうに、疲れました。