たまには、夫達のお話です。
「怪しい」
そうお猪口に注いだ熱燗を煽りつつ、オレは目の前でチビチビと酒を飲む剣心と瓶に詰めた酒を飲む弥彦、勝手に飲み比べを始めていた阿爛と明日郎に言う。
「景の姉ちゃんが怪しいのは今更だろ」
「そうでござるなあ」
「十年連れ添ってるってのに未だに肝心な秘密を話そうとしねえんだよ。ドクトルや信二、ススハムは事情を知っているみたいだけどよ」
ドクトルと信二、ススハムは世帯者だから問題ない。だが、ウィリアムやあの喋る刀、「あの男」や戦骨も景の秘密を知っている側の人間だ。
オレの女房だぞ。
せめてオレに言えば良いだろうと不満に思うが、献身的にオレに尽くすアイツにこれ以上無理強いするのも辛く思える。況してやドクトルに関しては景の持病の治療も世話になっている。
不満はある。だが、景のために我慢する。
「っていうか。ずっと気になってたんですけど、社長って姐さんとどうやって知り合ったんですか?」
「……そういやオレも知らねえな」
「拙者もでござる」
剣心、弥彦、阿爛、明日郎、四人の視線が集まる。
「十年前、長屋の前で会ったんだよ。最初は気にもしてなかったが気付いたら目で追ってたし。アイツ、力も体力もねえだろ?水瓶に井戸水溜めるのも苦労してたから手伝ったりしてたんだよ」
そう言うと全員想像できるらしく苦笑いを浮かべ、オレの言葉に頷く。
「いつも何かにビクビクと怯えて、オレを見る目も怖いものを見る目だった。それが堪らないぐらいムシャクシャして喧嘩しまくってた」
「……余計に怖がれねえか、それ?」
「怖がるな」
「怖がりますね。僕なら関わらない」
「テメェら仕事量増やすぞコラ。ったく……まあ、そんな訳も分からないが気になるし、分からないヤツが隣に引っ越してきた。手伝えばお礼も言うし、飯もたまに持参してくれたりもした」
「その頃から穀潰しかよ」
「弥彦、事実でも指摘はダメでござるよ」
お前はどっちの味方だよ。
そう思いながら空になった徳利を盆の上に置き、新しい湯に浸けていた徳利を取り、お猪口に注ぎ、熱い酒をゴクリと一気に飲み干す。
喉を焼く熱さと辛味が旨い。
「喧嘩の仲介を頼まれて極道相手に派手に喧嘩したとき、流石に
「へえ、シャチョーも弱い時期があったのか」
「当たり前だろ。で、だ。普通なら知り合いでも無ければ怖くて仕方ない相手が家の前で倒れてたとしたら、お前達ならどうするよ?」
「金目の物をくすねる」
「止めを刺す」
「その時次第ですね」
弥彦、阿爛、明日郎の三人はそう続ける。
「多分、剣心と同じだぜ」
「怖くても助ける」
その答えにオレも頷いた。
「普通なら見捨てるし、関わらねえのが普通だ。だがな、景のヤツは寝る間も惜しんでオレの手当てと看病を続けてたんだ。まあ、そこで一目惚れを自覚した」
「…………ちょっと待てよ。確か景の姉ちゃんってオレと同じで数え年だったよな?」
勘の良い弥彦の言葉に全員の動きが止まる。
「オレと会ったときは
「オレもまだあの時は十代だぞ」
オレは剣心ほど離れてねえよ。