「ねちっこいな、シャチョー」
「ねちっこくねえよ」
「いや、ねちっこいだろ」
「で、ござるなあ」
何だコイツらと不満に思いながら酒を煽る。
今、景と一緒に居るのは薫や恵、燕と旭達だ。少なくとも変な事に巻き込まれることはないだろうが、アイツらが酔って景に何かする可能性もある。
「左之は本当に糸色殿を愛しているでござるな」
「……当たり前だろ。ただ、どうもアイツを呼ぶヤツは全員お前みたいに『糸色』って呼びやがる。アイツはもう『相楽』だってのにムカつくぜ」
「ああ、その理由はオレでも知ってるぞ」
「明日郎、それ僕知らないけど?」
「姐さんって名家の生まれじゃねえか。その兄貴は別の家に行ってるし、姐さんがあの兄貴代わりの跡継ぎ云々で名指しを受けてんじゃねえの?」
そう言うと酒瓶を掴んで直飲みをやり始める明日郎にオレは眉間に皺を寄せる。あり得るっちゃあり得ることだが、景の事を按じていたんだぞ?
それが簡単に家督云々で名指しするか?
「左之助はアレだな。景の姉ちゃんを大事にし過ぎて縛り付けてるみてえだ」
「縛った事は何度かある。可愛いぞ」
「左之ぉ…下世話はやめるでござるよ」
「あんなか弱くて健気な姐さんに何て無体を…!」
「そーだぞ。姐さんがかわいそーだ」
「景の姉ちゃん、よく暮らせるよな」
一斉にオレを責める馬鹿どもに「じゃあ、自分の女房を縛りたいとか思わねえのかよ」と言い返せば顔を逸らした。へっ、全員同じだろうが。
ったく。なんなんだ?オレは景の事を未だに剣心が怪しんでいるから誤解を解こうとしているだけだぞ。確かに自慢したい気持ちはある。
「たまに思うが、景は天女だと思う」
「嫁自慢は聞き飽きたぞ」
「自慢じゃねえよ、事実だ」
そもそもオレの周りに来るヤツは景を狙いすぎだ。
こうしているときも下手したら狙われているかも知れないという考えが過る。いや、実際に景の美貌に目が眩んで奪おうとしたヤツが蒙古にもいた。
無駄なんてひとつもないからな。
「……つまみが消えたな」
「台所に唐揚げあったぞ」
「酒に唐揚げか、腹が空くぜ」
明日郎は勝手に冷飯を杓文字で掬い、椀に装う。そいつは残らねえように用意している景の分なんだが、言う前に食い始めやがった。
「酒を飲み、飯を食うってすげえな」
「明日郎らしいっちゃらしいね」
オレとしては未だに飯を集りにくるのはやめてもらいてえんだけどな。景が優しいから出迎えてるが、揃って来ないのはダメだろう。
せめて三人で来いよな。