「景の姉ちゃん、ちょっといいか?」
「どうしたんですか?明神君」
本当に珍しく我が家の勝手口を開けてやって来た道着姿の明神君に驚きつつ、キョロキョロと周囲を警戒しながら近付いてくる明神君に首を傾げる。
ひとえはしとりの稽古を見るために神谷道場に居るはずですし、左之助さんも個魔の方もいない。このタイミングで私に話しに来たという事は誰にも話せないか話しているところを見られたくない内緒のお話しですね。
「今日は私だけですよ。ドン達は居ますけど」
そう縁側に並んでいる家族を見遣る。
「景の姉ちゃんに聞きたいことがあったんだよ。姉ちゃんは
その名前を聞いて直ぐに私は眼鏡を外して静かにこめかみを押さえる。
「その人がどうしたんです?」
「いやな。ひとえのヤツがやってくれって言うもんだから景の姉ちゃんに聞きに来たんだ」
「……邊真愚は秦代に活躍していた細剣、刺突剣の様に細く針のように鋭利な剣を使う剣士です。ひとえが見たいと言ったのは彼の体得したという
全くもう私の書斎に入って遊ぶのは構いませんが、本の内容を他の人に聞くのはダメですよ。いえ、べつに怒っているわけではないけれど。
怪しまれるのは辛いんです。
「相変わらず物知りだな」
「知らないことは知りませんよ?」
「でもオレは景の姉ちゃんが分からないとか悩んでる姿見たことねえし。その秦代ってのもオレにはサッパリだったからな」
「…みんなには内緒ですからね」
描いているけど、出していないものを読まれたら更に繋がる訳ですし。そうなるとドクトル・バタフライや他の転生者に負担を掛けてしまう。
基本的に戦えない私はお荷物です。
それは、すごく悲しくて申し訳ない。漫画やライトノベルに登場する転生者は怖くても突き進んで行けるシーンは幾つか見たことがあるけど。
私には無理ですし、理解できなかった。
怖いものは怖いものだから、本当なら絶対に関わりたくない。もしも、そうなったらきっと私は怖くて怖くて怖くて何も出来ずに止まり続けている。
「姉ちゃん、無駄に背負い込み過ぎなんだよ。いっつも考え事ばっかりで疲れるだろう。たまには、少しぐらい身体動かしてみようぜ」
そう言って明神君は笑顔で竹刀を差し出してきた。
本当に明神君は変わらないですねえ。