私の書斎で何を読んだのかをひとえに聞けば本棚の最下段を指差す。確かに二段目か、頑張れば三段目には届きますね。危ない本や資料を纏めた彼是は最上段に移していた方が良さそう。
向こうの私も同じようにするでしょうけど。
下手に動けば世界の均衡を崩しかねない物はお互いに確認して、おそらく大丈夫だと判断した物はドクトル・バタフライにも頼んでいます。
ただ、こちらと違って向こうに点在する転生者は最低百人と考えるべきでしょうね。園田君と百合さん、北海道で起業して左之助さん達と提携しているという転生者の人もいるわけですし。
おそらく大丈夫なはずです。
「母様、おきゃくさん!」
「今行きますね」
しとりの声を聞いて思考を止めて玄関の方に向かっていくと姿お兄様が居ました。フラフラと玄関の段差に座っている彼の肩を掴み、ペタペタと顔も触ってみる。
「……本物ですね」
「僕と誰かが入れ代わっていたとしても直ぐに見破ることが出来るのに、随分と簡単に近付いてきたね。昔はもっと警戒心が強かったのに」
「ほんのちょっとだけ耐性が出来たんです。本当に微々たる耐性ですけど。それに触るのは家族だけです」
「それなら良かったよ。良からぬ事を企む人間もいるからね、景の相手を信用せず怪しんで警戒して拒絶するところは良い行為だ」
そう言って姿お兄様は笑う。
中性的な雰囲気を醸し出す姿お兄様を見ていたそのとき、お父様とお母様に送ったという彼の手紙を思い出して私は静かに天井を仰ぎ見る。
「いやー、まさか双子と双子を産むなんて想像もしていなかったよ。けど、死なずに済んだのは本当に奇跡とも言えるね」
「……抵抗はなかったんですか?」
「無い。彼女を愛すると決めた日、僕の気持ちは揺らぐ事はなくなった。なにより鎌足は本当に良妻賢母の良い女性だよ」
「妹に惚気るのは止めて下さい」
惚気を聞くのはイヤです。
私だってやり返せますからね?
「しとりも久しぶりだね。僕を覚えている?」
「ん!すがちゃん!」
「たは言わないんだね」
「渾名です。姿お兄様のところでは?」
「僕はママって呼ばれているね。前に安居院家のお嬢様の剣術指南の仕事を受けたことあるけど。『おぎゃばぶランド』ってのに行けるって言われたよ」
安居院さん、私のお兄様に謎の情報を与えるのはやめてほしいです。流石に、奈落と同じことを言われると警戒してしまいます。
そもそも、おぎゃばぶランドとは?
あっ、知りたくないのに知識が流れて……。