左之助さんは新しい相棒「蛮竜」を手に、喧嘩屋家業を復業し、今まで京都で過ごしている間に彼の通り名「喧嘩屋の斬左」を名乗っていた破落戸やヤクザの用心棒へと喧嘩を売りに行ってしまった。
どうして、この「るろうに剣心」の世界に『犬夜叉』に登場する「蛮竜」があるのかと考えれば簡単な事に行き着いた。
転生する際に生き延びる術として一つ、二つほど与えられる特典だ。「鍛冶屋のスキル」を頼めば、作ることは出来るだろうし。そのまま「本物の蛮竜」を頼めば特典として貰えるのは容易に思い付く。
何故なら、ここには私という転生者がいるのだから、ひょっとしたら私と同じようにこの世界に生まれ変わった人もいるだろうし。しかし、その人が私と同じく怖がりで臆病だったとは思えない。
「…明らかに妖刀っぽいのよね、アレ」
ポツリと呟いてしまった声に緋村剣心と稽古を行っていた明神君が反応し、神谷道場に遊びに来ていた高荷さんにおでこを触られ、熱を測られる。
「あの、私は普通ですよ?」
「……うぅん、熱は無いわね。でも、心労による精神不安定に陥っている可能性もあるわ。暫く糸色さんも剣さんも安静にしておきなさい」
「おろ。拙者もでござるか?」
「あんな大怪我を負っていたのに、たった二ヶ月程度で完治するわけないでしょう!そもそも剣さんは私のときもそうだけど、危ないことに首を突っ込み過ぎなのよ!」
高荷さんの言葉に明神君も神谷さんも同意するように頷きつつ、緋村剣心は困ったように頬を掻く。こうして他愛ない事で騒げているのは平穏な生活と言えるけど。
余り気を抜き過ぎれば雪代縁の襲撃から逃げる事は出来なくなる。……まあ、私が狙われるという保証はないし。それよりも祝言の日取りはどうしよう。
「雁首揃えてどうしたんだよ」
「この子がアンタの武器を妖刀なんて言い出したから、診断していたのよ。全く、もうすぐ祝言を挙げるんだから見ててあげなさいよ?」
そう言って左之助さんを怒る高荷さん。なんだか二人に申し訳無く思いながら「私の思い過ごしですから、左之助さんも気にしないで下さい。高荷さんもごめんね?」と二人に謝り、お土産の穴無しドーナッツを差し出す。
真っ先に明神君が一つを取り、美味しそうに食べる姿にホッコリとしながら、私はドーナッツを和紙で汚れないように一つだけ取って左之助さんに手渡してあげる。
「ありがとうよ。しかし、コイツが妖刀ねえ?」
「えっと、私の思い過ごしですから」
「いや、強ち間違いじゃねえかもな。お前の書いてる絵巻の『獣の槍』とは言わねえが、たまにコイツから声みてえなのは聴こえるな」
「恵さん、左之助が!」
「アレは馬鹿なだけよ」
あの、私の旦那様なんですけれども。