「烏賊さん、舵木さん、お帰りなさい」
志葉家の召喚に応じて鏡面世界に移動していた折神達の帰還を労いつつ、『力』のモヂカラを与えて失った分のエネルギーを補充する。
志葉様の言伝てを預かっていた黒子に手紙を貰い、静かにお茶を飲む黒子には申し訳なく思いながら、志葉様の「外道衆も志葉家の協力者の存在に気付き、そちらを狙っている可能性もある」と綴った文を読み終える。
志葉家の協力者。
糸色家の事になるのでしょうが、糸色家で『火』のモヂカラを発現しているのは私と娘姉妹です。元々素質がないのは分かっていたけれど。
姿お兄様とお母様にモヂカラは無かった。
つまり、私の身体に流れている『火』のモヂカラはお父様の血筋、ひょっとしたら五百年前から糸色家はモヂカラを持っていたのかも知れませんね。
「火」の文字を纏えるのは志葉家のみ。
ただ、志葉様のご意向(あるいは、影武者の育成のためか)によってお父様は「火篇」の文字を拝命しているそうですが、あくまでお父様の「火」であり、私や娘姉妹は違います。
「猛狒もお疲れ様です。しとり、ひとえ、お池に流したらダメですよ?」
木々を抜けて跳ねる猛狒折神を受け止め、お池にモヂカラを流し込もうとする姉妹を優しく止める。むにむにと二人の柔らかな頬っぺたを触り、二人の見つめる瞳を穏やかに見つめ返す。
「ん!母様もやる!」
「やろ?」
「お池が壊れてしまうから、ね?」
そう言うと二人とも分かってくれたのか。私の手を握ると縁側の方に歩き始め、一緒に座ると同時に私のお膝の上に頭を乗せて寝転び始める。
「なでて!」
「ん!よしよしでもいいよ!」
「あらあ、フフフ♪︎」
可愛らしくおねだりしてくれたしとりとひとえの姉妹の頭を優しく撫でてあげながら、空を飛んだり、地面を走ったりする折神達の事を見つめる。
みんな、本当に仲良しで良い子達です。
「(しかし、外道衆が私の事を探っているとなると結界の事も考えないといけませんね。この家だけ異様にモヂカラを蓄えていますから)」
一日十回の重ね掛けを繰り返してしまったせいか。
志葉家の屋敷より堅牢になった我が家の結界は、時代樹様の加護やサンピタラカムイ様の加護も相俟って、並大抵の妖魔では通り抜けることは出来ない。
血祭ドウコクは結界など無視して進んできそうですが、それは考えないようにしましょう。だって、本当に突き進んできたら私にはどうすることも出来ません。
正直、この結界でも不安しかありませんね。