「母様、これ読みたい」
「うっ。どこで見つけたの?」
「くら!」
にっこりと太陽のように目映く愛らしく微笑んだしとりの手に持っている冊子の表紙に綴った『剣術目録』の文字とにらめっこをしながら、渋々と私は『封』のお札を剥がして彼女に読ませてあげる。
甘いのは分かっていますけど。
ウルウルとした目で見つめられてしまうと許してしまう、母親として毅然と振る舞うべきなのでしょうが、どうしても許してしまいます。
そう思いながら本を読んでいるしとりの後ろを追いかけていたひとえに気付き、何をしているのかと思った瞬間、いきなりひとえが竹刀を構えた。
……でも、持ち上がっていませんね。
「ねーしゃま、ひーもやる!」
「ん!ひーちゃん、めっ!」
プルプルと震える身体で竹刀を持ち上げたものの、竹刀を振ることは出来ず、ポトンと竹刀を地面に置くように落としてフンスとひとえは胸を張っています。
かわいいけど、危ないことはやめてね?
「ひーちゃん、あぶないの。わかる?」
「むう、ひーもできるもん」
「ん!母様、めっ!して!」
「あらあ、どうしましょう?」
ぷくーっと可愛らしく頬っぺたを膨らませるひとえを連れてきたしとりはお姉ちゃんですね。二人の頭を優しく撫でてあげ、二人の事を抱き締める。
温かくて安心できる匂いです。
「ひとえ、お姉ちゃんは貴女が心配だから言っているんですよ?」
「むぅ」
「しとりもひとえはお姉ちゃんと一緒に遊びたいから真似をしているんです」
「んっ、しってる」
「フフ、思ったことを直ぐに出来るのは良いことですけど。ちゃんと『お姉ちゃん、一緒に遊びたい』『良いよ、遊ぼう』って言いましょうね」
そう言って二人の背中をそっと押してあげる。
「ねーしゃま、いっしょする」
「ん。教えてあげる!」
フンスと姉妹揃って自信満々に胸を張り、私に笑顔を向けてきました。フフ、二人とも良い子だからお母さんは安心して見ていられます。
でも、お母さんを挟んで謝るのはやめましょうね。
「……お前、また挟まれてるのか」
「あ、おかえりなさい」
「おう。ただいま」
左之助さんは『悪一文字』の法被を脱ぎ、怪我も負っていない上半身を晒す。自然と鍛練を繰り返しているため筋肉質な身体なのに細いままです。
左之助さん本人はもっと筋肉を持ちたいみたいですが、すでに全身ピンク色の筋肉に変わっている時点で赤と白のどちらかに傾くことはありません。
まあ、しとりも同じように鍛えていますけど。緋村剣心や瀬田宗次郎のように卓越した神速に到達するには、まだまだ時間を労します。