「其処の女、止まれ」
その言葉に歩みを止めて家屋と家屋の隙間を見るとアヤカシが佇んでいた。機関銃の様な物に刀を無理やりくっ付けた武器を木箱の上に置き、此方を見据える異様な出で立ちに小さく悲鳴を上げてしまう。
「無駄な抵抗は止めろ。無駄だからな」
「な、なんですか?」
枝垂れ柳のようにも見える姿のアヤカシの放つ威圧感に身体が震えて、上手く走ることも出来ず、上擦った声で聞き返すことしか出来ません。
ゆっくりと深呼吸して怯える身体で翳った隙間に踏み込み、転ばないように歩きながら、木箱の近くに座ると彼は珍しいものを見るように見下ろしてきた。
「極上の恐れ。
そう言うと私の身体に手を伸ばしたアヤカシの腕が火花を散らして後ろに弾け、私の真横でシンケンマルを振り上げたままアヤカシを睨む谷さんがいた。
「先生ッ、一人で何してるのさ!!」
「ご、ごめんなさい」
「謝るのは後!逃げるよ!」
谷さんの言葉に頷いて走るも直ぐに息切れを起こしてしまい、フラフラと今にも倒れそうな足取りで逃げていたその時、無数の手裏剣がアヤカシの身体を撃った。
「し、志葉様?」
「糸色、大事無くて良かったぞ。お前のために色枠を増やそうと会合を開いていたおかげで早く駆けつけることが出来た」
普通の日本刀を腰に佩いた志葉様の言葉に困惑しながら池波君の手を借りて立ち上がると黒子の人達に連れられ、段幕の中に連れて行かれ、逃げる場所を教えて貰う。
何かを言おうとしていた池波君の頭を志葉様と谷さんが叩き、他の二人は私に目配せで早く逃げるように訴えてくれ。私はアヤカシから逃げる。
黒子の人達に守られながら歩いていると白に黒の着物を纏った浪人風の男性とすれ違う。向こうも私に気付いていたけれど。
彼の目的は戦うことだけ。
左之助さんや姿お兄様、緋村剣心のように強ければ相手の都合なんて考えず、ただただ殺し合える相手を望んでいるのが彼です。
「景?なんで、ここに」
「え?あ、左之助さん」
黒子の人達に担がれて移動していると、いつの間にか港にいた左之助さん達の目の前に降ろされ、説明をする間もなく戻っていく黒子の人達を見送る。
いえ、そういうことに尽力していることは知っていますけど。まさか左之助さんの居場所まで簡単にたどり着けるなんてすごすぎますね。
本当に日本の平和を守っているんですね。