「先生!迎えに来ました!!」
「………まだ、日の出前ですよ?」
ニコニコと笑っている谷さんに苦笑を浮かべつつ、私は割烹着を身に付けたまま彼女と話すのも申し訳なく思い、台所に回ってもらい、お座敷に座って左之助さん達が起きるまで待って貰います。
志葉様の要求とはいえ朝早くにやって来た谷さんに炊き立ての雑穀米をお茶碗によそい、小皿に皮を剥いて小口切りしたキュウリと煎り胡麻の酢の物、漁港で頂いた烏賊と里芋の煮物を其々のお皿に入れ、豆腐とお揚げのお味噌汁をお椀に装い、御膳に乗せる。
「冷めない内に召し上がって下さいね」
「お、おお…!嫁力の高さが羨ましいっ。先生、いただきます!」
「はい、どうぞです」
よめぢから?
変な言葉を使う谷さんの傍にお茶を置き、のそのそとアクビを噛み殺しながら台所に入ってきた左之助さんは朝御飯を食べる谷さんを暫し見下ろし、のそのそと台所を出ていってしまう。
暫くして、また戻って来ました。
「なんで此処にコイツがいる!?」
「でも、朝早くに訪ねて来て」
「お、うむ、ぬうぅ…」
どう言おうかと悩む左之助さんを横目にお味噌汁を啜り、ほっこりと笑みを浮かべる谷さんに満足げに私も頷き、お代わりの有無を訊ねる。
「あ、もらいます!」
モグモグと動く口許を隠しながら頷く谷さんのお椀にお味噌汁をまた装ってあげ、不服そうに顔を洗って手拭いで水気を拭き取る左之助さんにお結びを一つ差し出す。
「餅米か?美味いな」
「雑穀米です。もうちょっと手を加えたいんですけど。増やしすぎたら体調も崩れますし、もう少し味付けを薄めますか?」
「いや、ちょうど良い味だぞ」
左之助さんの言葉に頷きつつ、私の手や指に付いたお米まで食べようとする彼に苦笑を浮かべ、谷さんは「くぅっ、世の中の夫婦は乱れてる!」と悔しげに文句を言いながらもお茶碗の雑穀米を頬張っています。
「左之助さん、自分で食べた方が」
「景の味がする」
「変態さんですか?」
思わず、そう聞いてしまう。
だって私の手から味がするわけないですし、こんな出涸らしみたいに細い身体に旨味があるようには思えません。もう二回りぐらい背丈があれば、と思う。
「お代わり欲しいです!」
「あら、もう?」
「なんか一杯食べられます!」
だんだんと可笑しくなってきた谷さんの表情を見つめつつ、お米をよそって、みんなのおかずや朝御飯の分は取り分ける。
侍ですから、お腹は空くのでしょうね。
いつもいつも助けて貰ってありがとうございます。