平穏な日々を過ごしながら錦絵屋のおじさんに仕事の品を届けた帰り道。私の目の前に再び雪代縁が現れた。ゆっくりと深呼吸を繰り返して、そのまま彼の真横を通り抜けるように歩く。
大丈夫。人混みの多い場所だから、こんなところで攻撃してくる筈がない。そう自分に言い聞かせながら、ちょうど彼とすれ違った瞬間、背筋に冷たいものを感じ、身体の力が抜けて私はその場にへたり込んでしまった。
「
「はっ、あっ、ひっ」
たった、その一言で私の身体は怯え竦み、まともに動くことも出来ず、ゆっくりと視線を合わせるようにしゃがんだ雪代縁と、初めて真っ正面に見据えるように此方を見下ろす彼と目が合う。
妖しげな光を宿す瞳が、私を見つめる。
怖い、怖い、怖い、怖い…!
「そろそろ祝言を挙げるんだってな。姉さんは幸せになれなかったのに、アイツと親しくしているお前が幸せになるのか?」
「あぐッ」
私の首を絞めるように伸びてきた彼の手を掴むも私の非力な握力では引き剥がせず、誰かに助けを求めようと視線を向ける。───けれど。いつの間にか私達の周りには人がいなくなっていた。
「志々雄真実の甲鉄軍艦もそうだ。お前の作った爆薬で計画は失敗に終わった。お前の知恵が、計らずとも緋村抜刀斎を手助けしていた」
「カヒュッ…!…ぇご…ッ…」
い、言いがかりにも程がある。
ダイナマイトを作ったのは左之助さんを助けるためで、私は別に緋村剣心を助けようとしたわけじゃない。そう言いたいのに雪代縁の首を絞める手の力が強すぎて、息も吸えず、目の前が歪み始める。
「…………まあいい。お前の知恵は外印サンが欲しがっている。ボクには芸術はさっぱり分からないが、彼の琴線に触れるものがあるんだろう」
「…!…ケホッ…ゴホッ!…」
雪代縁に首を絞めていた手を離して貰えた瞬間、私は咳き込みながら息を吸って、ズキズキと痛みを訴える首を両手で押さえながら彼を見上げる。
「外印サン、後はお好きなように」
「余り手荒な真似は止めて貰いたいね。私の製作意欲を掻き立てる物を彼女は幾つも抱えているんだ。……さて、今回で会うのは二度目になるが。私は外印、
髑髏の頭巾を被った男、外印の何処か演技じみた挨拶に反応する間もなく、私は手を握られ、雪代縁とは違う、燦々と輝く目に見つめられる。
トン…!と。
突如、後頭部に衝撃が走り、私の意識は其処で……