「ん!母様、ここ!」
「かーしゃま、こっち!」
「フフ、二人とも危ないですよ」
私の手を引いて橋の上を歩くしとりとひとえの笑顔を見ていたその時、目映い光が子供を避けて次々と大人の身体をすり抜けていく。
今のは何だったのかしら?と私は首を傾げて前を向く。しかし、しとりとひとえの二人を見ることが出来なかった。手を握っている感覚はあるのに、二人の事が見えなくなっています。
わたしの、大切な娘達が見えないっ…!
ゆっくりと地面に座り込み、手を伝って来る二人の熱を頼りに抱き締める。大丈夫。消えていない。見えなくなっただけです。
「しとり、ひとえ、悪いアヤカシに二人を見られないようにされてしまいましたけど。ちゃんと抱き締めていますから、一緒にお家にかえりましょう?」
そう言って二人の手を頼りに家に向かって歩き始める。家につけばショドウフォンを使って二人の事を見ることが出来るかも知らない。
大丈夫。大丈夫。大丈夫‥…そう何度も繰り返しながら、しっかりと二人の手を握ったまま玄関を通り、手も口も洗わず、二人の事を抱き締める。
ショドウフォンを取り出して「見」のモヂカラを眼鏡に付与し、ぼんやりと二人の事を見ることが出来るようになったものの。
やっぱり、まだ声が聴こえない。
「左之助さんなら聞こえる筈です。だけど、お母さんの傍を離れないで下さいね」
私の言葉に二人は頷いています。
ただ、どうしても声は聴こえない。
「しとりもひとえも居ます。絶対に見えなくなったりなんてしません。貴女達は私の宝物なんです、絶対に失うものですか」
何度も何度も言葉を繰り返す。
「(おそらくアヤカシの能力、無差別に攻撃していたということは協力者の顔を完全に把握しているわけじゃない。あくまで捜索しているだけ)」
そうなると非常に厄介です。
相手は私という存在を見つけるために同じことを繰り返している。『侍戦隊シンケンジャー』でも捕まえるのは難しいかもしれない。
いえ、今は変な事を考える必要はない。私は自分の大切で大事な子供達を守ることだけを考えていれば良いんです。他の事はそのあとでもいい。
私が怖がって不安ばかりでは、しとりとひとえも安心することは出来ませんよね。落ち着いて、ちゃんと此処に二人とも居るんです。
絶対に大丈夫だと振る舞うのです。
大事な子供を守るためには、これぐらいやるのが当たり前のことです。私は強くもないし、頼りになるような母親でもないけれど。
二人だけは絶対に守りますから。