最近、夜な夜な東京府の中を転々と移動し、妖怪や幽霊、果てには人間とも殴り合っている妖怪の話の相談を受けることが増えました。
いつの間にか私は東京府妖怪相談役なんていう役目を貰い受けていたらしく、個魔の方に聞けば大天狗様の指示だそうです。
「で、どうすれば良いのでしょうか」
「どうと言われても危ないですよね」
「要するに自制の効かねえ馬鹿な妖怪が夜な夜な暴れまわっている訳だろ?」
「おお、流石はしとり様の御父母様!いずれ百鬼夜行を率いる我らが主の父君と母君の御慧眼の通りです。しかし、その妖怪は恐ろしく強いのでございます」
「へぇ…」
猛禽類みたいに鋭く笑う左之助さんの顔をしとりとひとえは見上げ、不思議そうにしたかと思えば、二人はにっこりと穏和で太陽のように笑顔を咲かせる。
とても可愛いです。
よしよしと二人の頭を優しく撫でていると「おそらく今晩当たりに、大橋のところに現れるかと」という言葉に手を止めてしまう。
左之助さんと緋村剣心の戦った河原。あそこに妖怪が、それも秩序を持たぬ妖怪が現れる。それは、とても怖いことです。
「なる程な、彼処に出るわけか」
「お館様、何卒ご助力を!」
「景、今夜は先に寝ててくれ」
「…………はい」
「心配すんなって、オレが負けるか?」
「ん!まけない!」
私の頭をワシャワシャと撫でる左之助さんの言葉にしとりは力強く答え、私もひとえも頷く。私の左之助さんが力自慢の妖怪に負けるわけがないんです。
強いからって威張るのはダメなことです。
「とーしゃま、がんばってね?」
「おう。キスしてくれたら頑張るぞ?」
「やっ!」
「なんでだ?!」
「左之助さん、娘にせがむのは流石に」
「お、おお、悪い」
ムスッとしてしまう自分の顔を触りつつ、自分の夫のとんでもない言葉に少し呆れてしまいます。女の子のファーストキスはすごく大切なものなんですからね?
まあ、私の相手は左之助さんでしたけど。
「しとりはしてくれるか?」
「左之助さん?」
「んー、しとりはけんちゃんがいい」
「やっぱりあのクソガキ折檻しようぜ」
「左之助さん?」
ピキピキとこめかみに青筋を立てて怒る左之助さんから、すすすっと姉妹を連れて離れる。子供になんていう言葉を聴かせるんですから、ダメですよもうっ。
そもそも人を好きになるのは良いことですから、過剰に警戒したらしとりとひとえに嫌われてしまうかも知れませんよ?そんなことになったら、悲しいんですから絶対にやめましょうね?