某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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左之助さん視点になります。

日間ランキング56位、ありがとうございます。


人誅の始まり 破

朝早くに出ていった景がもう三日も帰ってこない。神谷道場にも高荷のいる診療所にも居らず、剣心や弥彦にも探して貰っているがアイツは見つからない。

 

高荷は「愛想尽かされたわね」とか言いやがるが、アイツがオレに愛想を尽かすわけないだろと言い返したら頬を引き釣らせ、景の作った煎餅をバリッと齧った。

 

最後に景を見た錦絵屋のオッサンは白髪の男と話していたっていうが、アイツがオレ以外に靡くとは思えねえから浮気は絶対に有り得ない。

 

「ってなると誘拐だな」

 

「おろ。観柳の時もそうだが、やはり糸色殿は面倒事に巻き込まれやすいでござるな」

 

「剣心も大概人の事は言えねえだろうがよ!」

 

「……それはそれでござるよ」

 

ふいっと視線を逸らす剣心の頭をベシンと叩き、景の捜索を続ける。斎藤も軍部の連中を当たってくれるらしいが、景の護衛と監視のために着けていた警官が何者かに襲われ、半死半生の状態だって聞かされた。

 

オレに恨みを抱くヤツは多い。

 

ひょっとしたらソイツらが景を拐った可能性もあり、手当たり次第にオレに喧嘩を売った奴らに会いまくってはいるが、一向に手懸かりは掴めずにいる。

 

「左之、気づいていると思うが」

 

「…嗚呼、オイ。いつまで見てるつもりだ」

 

剣心の呼び掛けにオレも頷きつつ、人混みを避けて人気の無い川沿いまでやって来たんだ。そろそろオレ達を付け回しているヤツの顔を見とかねえとな。

 

「……縁…?……巴ッ!!…」

 

「剣心?おい!?」

 

唖然と目の前に立つ男を見つめて硬直する剣心の肩を揺さぶるが、動揺が激しすぎるのか。いつもの飄々とした態度は完全に無くなり、焦りで錯乱したように目の前にいる男を見つめている。

 

「お前、姉さんの幻を見えたのか。ふざけるな、ふざけるなッ、ふざけるなァッ!!お前が、薄汚い人斬り抜刀斎がボクの姉さんを見る資格は無いンだよ!!」

 

「……ッ…」

 

剣心の知り合いにしては、あの目付きは尋常じゃねえ……ありゃあ、何もかも恨んで憎んでいるような悪意に支配された目だ。だが、それよりもオレは目の前に立つ男の髪色に視線が向く。

 

───白髪の男、こいつが景と最後に話した男だ。

 

「テメェ、人の女を何処にやりやがった!!」

 

「……お前の女?嗚呼、糸色景か。アレならボクの仲間と今は仲良くしているんじゃないですか?何せアイツも世界に絶望している、ボクと同じ存在だ」

 

アイツの不安を何も知らないヤツが偉そうに自分と同じだと?ふざけるなよ、アイツが夜になると震えて泣くことも、死にたくないと泣くことも知らないヤツが…!

 

「ブッ飛ばす…!」

 

風呂敷鞘から蛮竜を引き抜き、白髪の男に斬りかかった瞬間、オレと剣心の身体を押さえつけるように、カタカタと歪な音を出す無数の忍びが身体に飛び付いてきた。

 

「抜刀斎、お前にはボクと姉さんの味わった絶望を与えてやる。お前のせいで、またお前の周りにはあった幸せが壊れるんだ」

 

「縁、待てっ!待ってくれ、糸色殿は何処へ!」

 

「……チッ。こんなときも他人事か。いずれ人誅を下す時、お前達に帰してやるさ。彼女が、そう自分の意思で望んだならな」

 

「クソが、離れ、ろおぉぉぉーーーッ!!!」

 

オレは地面に蛮竜を叩きつけ、無理やり忍びを引き剥がす。……だが、土煙と忍びのばら蒔いた煙幕に紛れて、アイツを完全に見失ってしまった。

 

絶対に見つけ出してやるから、無事で居てくれよ。

 

 

 

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