八宝斎の泥棒騒動は東京府各所で起こり、緋村剣心と左之助さんは毎度の如く捕縛依頼を受け、八宝斎の事を捕まえに行っています。
真面目に無差別格闘流を興すと言っていたのは嘘だったのでしょうか。もしも彼の言葉が嘘だったらとても悲しくて酷い嘘です。
「御免。此方は糸色景様のご自宅か?」
ハキハキと喋る何処か力んだ声に「はい。今行きます」と伝えて玄関の戸を開ける。が、誰も居なくて首を傾げかけたところで足元に大筆を背負った少年を見つけ、ゆっくりとしゃがんで彼に視線を合わせる。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「ワシの名は
楽京斎。
その名前は知っています。八宝斎に並び立つ程の強さを持つ破廉恥すぎる野望を持つ武道家であり、筆術を格闘技に組み込んだ人でもある。
しかし、私より筆の上手い人は沢山居るのに?と不思議に思いながら私の傍にすり寄ってきた楽京斎の事をしとりが電光丸で叩き斬った。
「しとり!?」
「ん。母様、危なかった」
最高電圧に引き上げた状態の電光丸を受けた楽京斎はピクピクと玄関先で痙攣し、ほんのりと芳ばしい匂いを放っていたので家の中に運ぼうかと思った瞬間、八宝斎がやって来て彼の事を投げ飛ばした。
「久しぶりですね、八宝斎君」
「うむ、清で鍛えてきたぞ!」
「はっちゃん、それ嫌い」
「しとっちゃん、これはワシの友達でな」
「嫌い」
「う、うむ、おおぁ……」
しとりは一目見て決めるけど。一体、どこで好きか嫌いかを判断しているのかしら。当てずっぽうというわけではないですし、素直すぎるだけですね。
「しとり、お母さんは大丈夫ですから、ね?」
「ん。次は斬る」
「逞しく成長しましたねえ……」
よしよしと彼女の頭を優しく撫でていると煤けた楽京斎が立ち上がろうとしたものの、想像以上に電光丸の一撃は効いていたらしく、動くのがやっとのようです。
「ようやく追い付いたぞ、このクソガキ!」
「全く、拙者を撒くために女湯に入るとは…」
ものすごく怒った左之助さんと緋村剣心の登場に焦ったのか。八宝斎は楽京斎を二人に向かって投げつけ、そのまま逃げて行ってしまった。
「其奴が此度の犯人だー!」
「……景、本当か?」
「半分、正解です」
「拙者が追うでござるよ」
そう言うと緋村剣心は倭杖を抜いて、凄まじい速さで八宝斎に迫ったかと思えばゴスンと彼の頭を叩いて直ぐに戻って来ました。
なんとも言えませんね。