しとりは楽京斎の事を物凄く嫌い、私に弟子入りしようとする度、彼の事を攻撃して警察官が持ち帰るところまで、しっかりと見つめています。
「どうして、しとりは楽京斎が嫌いなんですか?」
「……あいつ、母様に変な目した」
「へんなめ?」
あ、あー、えと、あれですね。魚拓のようなものを私で試そうとしているのでしょうが、流石に私もアレを受けるのはイヤです。
いえ、そもそも攻撃なんて受けたくないです。私は普通の人より身体の強度は足りないですし、普通のパンチを受けたいだけで半死半生になるかもしれません。
そうならないように気を付けているんですけど。やっぱり危険は危険ですから、しとりの危惧も分からないわけではありません。
むしろ当然の心配です。
私の身体の事をよく分かってくれていますね。お母さんとしては、とても嬉しくて幸せです。でも、やっぱり有無を言わさぬ斬撃はやめてあげましょうね?
楽京斎のほうが先に格闘技を始めているはずなのに、しとりのほうが圧倒的に強くなってしまったのは彼女の努力によるものなのか。
それとも左之助さんの遺伝なのでしょうか。
「ん!しとりがんばる!」
「何を頑張るんですか?」
「あいつ、たおす!」
フフ、左之助さんにそっくりですね。
こんなに強気になれるのは羨ましいですが、ひとえはしとりのことを不思議そうに見つめるばかりです。末娘はまだまだ知る機会が多そうです。
「かーしゃま、おふでだめなの?」
「いいえ、お筆は使って良いんですよ」
そう言って私は水墨画で使っている筆を取り出して、ひとえに持たせてあげると地面に倒れ伏す楽京斎に向かって筆を差し出す。
「いっしょ、する?」
「ひーちゃん、だめ」
「わるいこないよ?」
「……ん!母様に悪いことしたら怒る!」
しとりは少し考えた後、そう気を失っている楽京斎に告げると神谷道場に向かっていき、フラフラと立ち上がった楽京斎はそんなしとりの事を見つめ、何やら良からぬ事を考えていそうです。
「(『封』のモヂカラ掛けておきましょう)」
こうしておけば技は出せませんし、攻撃なんて出来ないようにしてしまえば危なくなることはない。それに、危ないことは危ないですからね。
私の大切な娘に悪いことしようとするなら格闘技を出来ないように拘束してしまいます。八宝斎ももしものときは同じようにするつもりです。
「げへへ、ようやく気を許したな」
「かーしゃま、いじめちゃめっ!」
「い、虐めておらんぞ」
「めっ!」
「す、すまん」
ウチの娘達は強いですねえ……。