「猛筆拳!!」
「テメェ、クソガキがっ!!」
大筆を振るって
猛筆拳。
未だに完成に至っていない楽京斎の奥義にして基礎の技とも言える技術。素早く相手の身体を筆で打つ技法でもあり、アニメオリジナルの格闘技「格闘書道」の技術に通じる永字八法です。
私を頼った理由も糸色家は三百年続く書家の側面もあるため永字八法の正確さを学び、八宝斎の事を倒したかったからだそうです。
「左之助さん、相手はまだ子供ですから…」
「景、このクソガキは助平だぞ」
「でも、恵さんは『覚えておきなさい。所詮、男なんて
「女狐め、また余計な事を」
私の定期検診を請け負ってくれていますし、そういうことは言っちゃダメですよ?私はお膝の上に座っているひとえの頭をしとりと一緒に撫でながら、そう左之助さんに伝える。
しかし、猛筆拳が左之助さんの片腕を封じ込めて尚も完成に至っていない理由はもう既に分かっています。単純に楽京斎の文字を書く手捌きの遅さ。
速記を極めると文字を省略化してしまい、猛筆拳の威力を落としてしまう可能性もあるけれど。楽京斎に必要なのは文字を書く速さですね。
「ったく。膠は洗っても落ちにくいってのに」
「お手伝いしますね」
「悪い。助かる」
「フフ、良いんですよ。しとり、ひとえをお願いしますね」
「ん!」
私の言葉に元気良く頷いたしとりは自分のお膝の上にひとえの頭を乗せて、ゆっくりと優しく頭を撫でてあげている。とても可愛くて素敵です。
「ぐぬぅ……おのれぇ」
「楽京斎君、今日はもうお休みにしましょうか。文字の書き方を教えるにしても怪我をしていたら集中も出来ませんから、ね?」
「くっ。おねいさんの言葉なら聞く。頭が痛いからだっこしてくれ」
「オレの女房だからな?」
もう、子供と張り合わないの。
「ごめんなさいね。私は男の子を抱っこできるほど力は強くないから」
頑張れば持てるかも知れませんが、半日か一日、下手したら二日か三日は動けなくなりますね。冗談ではなく本当に筋肉痛で動けなくなるでしょうね。
そう切実に自分の身を按じながら、左之助さんに迷惑を掛けてしまう事は出来るだけ避けたい。好きだから寄り添える関係で居たいんです。
いつももたれ掛かってしまうから、せめて彼の安心できる場所でありたいんです。けど、最近また緋村剣心に隣を取られそうで不安です。