しとりの人の好き嫌いに口を出して彼女の事を傷付ける事はしたくないですが、ここ最近の彼女はものすごく楽京斎に手厳しい。
私に悪さをしようと思っている事を察知し、しとりは警戒しているのは知っていますし、私のために怒ってくれている事も分かります。
でも、やり過ぎるのはダメです。
「ん!今日もしとりの勝ち!」
「ぐ、ぐうぅ…!」
「ラッキー、いい加減諦めたらどうだ?」
「だ、だまれ!ワシはまだ諦めねえ!」
そう言い争う八宝斎と楽京斎より少しだけ背の高いしとりは自信満々にフンスと胸を張って電光丸を鞘に納める。楽京斎と戦うとき、しとりは自動迎撃機能を切っているので純粋な実力差です。
「景、今日で何勝目だ?」
「しとりは九十一戦九十一勝零敗です。今も勝利を更新していますが、あまり助長してしまうと危ないかも知れませんね」
左之助さんとしとりの今後について話しながら、大筆を素早く横一文字と縦一文字に振るって「十文字斬り」を繰り出す楽京斎の攻撃を、しとりは
今の動きは葦名流の動きですけど。
私の本棚を閲覧する事は許していますから、あの技を見つけるのは当然と言えば当然だけど。しとりには身体に負担を掛ける技を多用して欲しくない。
「今のは初めて見る技だ」
「葦名流の奥伝のひとつ、葦名十文字。陸奥国に伝わる、戦国後期に生まれた古流剣術です」
「……お前、陸奥国なんかいったことないだろ」
さっと顔を逸らす。
私の事を知っているというのも中々に大変ですね。ウソは言っていないけれど。怪しまれてしまうと不安になる。それに、しとりは楽しいから学んでいるだけで、とくに悪いことは考えていない。
「しとりはまだまだ嫁にやる気はねえが、強すぎて貰い手が無くなりそうだな」
「そんなことありませんよ、ねえ?」
「ん!しとり、けんちゃんがおよめさんに貰ってくれるって言ってくれた!」
「ほう?」
「左之助さん?」
蛮竜を持って立とうとする左之助さんに困惑し、彼の名前を呼ぶと「ちょっとブッ殺してくるだけだ」と恐ろしいことを宣言する彼の袖を掴む。
それだけは、絶対にダメです。
剣路君は親友のお子さんですし、しとりも恋心なのかは分かりませんけど。気を許しているのは、今のところ彼だけだと思いますから。
……これ、偉そうに言えませんね。
私は好きになった人と夫婦になりましたし、そういう騒動に巻き込まれた経験はありませんから。