「げへへ」
「楽京斎君、その笑い方は怖いです」
「むぐっ、そ、そうか?」
「はい。それと文字の書き方も凄く上達しましたね、花丸です♪︎」
彼の和紙に小さく赤文字の花丸を描き、頭を撫でてあげようとしたその時、何処からともなく放り込まれたキセルが彼の額を打つ。
このキセルは八宝斎の愛用しているものだけど。いきなり不意打ち気味に投げるなんて、どういうつもりなのだろうかと首を傾げつつ、キセルを拾い上げる。
「おのれ。ハッピー、貴様ぁー!」
「お前だけ言い思いなどさせるかあ!」
ぎゃいぎゃいと口論に始まり、お互いの極める途中の技の数々を繰り出して、我が家の外に出ていってしまう八宝斎と楽京斎の事を見送る。
「かーしゃま、こもいうた、うたって」
「フフ、お眠さんですか?良いですよぉ」
目尻を擦る手を優しく握って、太ももで彼女の頭を受け止め、トントンと優しく一定のリズムを作るように彼女のお腹を触る。
可愛い可愛いひとえの事を愛していると伝えるように子守唄を歌う。くぴ、と可愛い音を出すひとえの寝息は安定していて、穏やかに身体が呼吸で揺れる。
やっぱり、ひとえは可愛いです。
「ん!……ん、ただいま」
いつものように帰宅の挨拶をしかけていたしとりはひとえが寝ていることに気付き、すぐに小さな声で挨拶をしてくれ。私も小さな声で「お帰りなさい、しとり」と彼女の頭を優しく撫でてあげる。
嬉しそうに目を細めるしとり。
左之助さんに似て笑うときに目を細める癖があるのも可愛いです。しかし、二人に抱き付かれてしまうと夕御飯の仕度が出来ませんね。
どうしましょうか。
左之助さんにお願いして、みんなで久しぶりに赤べこに行くのもありかもですね。妙さん、しとりとひとえにいっぱい食べさせようとするから健康体の維持していてもビックリしちゃうんですよね。
いえ、悪いことではないんですよ。
私の娘達を可愛がってくれるのは嬉しいですし、自分のことのように喜べます。ただ、お肉ばかり食べていたら栄養バランスが崩れます。
そうなったら大変です。
「帰ったぞ、っと……寝てるのか?」
「父様、しーっ」
「おう」
『悪一文字』の法被で帰ってきた左之助さんもひとえが眠っていることに気付き、ゆっくりと彼女のおでこに掛かる髪を撫でて、むにむにと頬っぺたを触る。
けど、しとりに手をペチペチと叩かれ、苦笑いを浮かべながら「悪かったよ。ほら、な?」と今度はしとりの顔を両の手で包み込んでしまった。
前世で良く見たものですね、