猛筆拳の改名に悪戦苦闘する楽京斎にお茶を差し出して、私も左之助さんと一緒に並んでズズッと温かな緑茶を味わう。のんびりとした時間は大好きです。
のんびりとお茶を飲みつつ、空を舞う木刀を受けて墜落する八宝斎に向かって龍槌閃擬を繰り出す明神君が見えた気もするけど。
多分、燕さんに悪戯したんでしょうね。
「迅雷?いや、合わん」
「アイツも技の名前に拘るな」
「そういうものなんですよ、きっと」
「二重の極みもそう考えると武骨で良いな」
フフ、そうですね。
未来の世界だと開祖として悠久山和尚の肖像画を実家の武道場に飾っているそうですけど。それを描いたのは私なのでしょうね。
それは、ちょっとだけ楽しみです。私の描いたものが残って、みんなを繋いでいる。嬉しくて幸せな気持ちになります。
「夢現のようですねえ…」
「……おっかねえこと言うなよ。お前が幻とかオレは絶対に信じねえし、許さねえからな」
「フフ、寂しがり屋は一緒ですね♪︎」
クスクスと笑う私に左之助さんは大きな手を差し出してきて、そうっと握り返してまた私は笑ってしまう。あと何百回……あと何十回だけ、彼の手をこうして握ることが出来るんでしょうか。
しとりとひとえが居るから左之助さんは燃え尽きることはないでしょうが、もしものことがあったら大変ですし。少しずつ慣れて行けたら良いなあ……。
「出来た!ついに出来たぞぉ!これがワシの雷神猛筆拳じゃあ!!」
「へ?」
荒々しく放たれた墨汁が此方に振り落ちてきた刹那、電光丸ではなく竹刀を構えたしとりが机を踏み台に部屋の真ん中に立ち、片手で竹刀を回転させる。
突風を作り出して墨汁を吹き飛ばしたしとりは凄く怒った顔で楽京斎に近付き、バシィンッ…!!と竹刀で彼の頭を思いっきり叩いた。
「……しとり、何処で?」
「ん。母様の本!」
今のは紛れもなく旋風剣でした。
───けれど。私の知っているものより簡易的で攻撃するときに隙は無く、正しく理想の返し技とも言える一撃だと思います。
しかし、しとりは本当に多才ですね。私の教えていないものも意欲的に覚えてくれるのはとても嬉しく思えますし、とても喜ばしいです。
とは言え、です。
流石に完成した奥義をいきなり破るのは可哀想なので止めてあげましょう。あまりにも簡単に破られてしまい、楽京斎も呆然と自分の持っている大筆を見つめてしまっている。
「ん。母様に当てたら今度は斬る」
「しとり、お母さんは大丈夫ですから」
ひとえが怖がっ……てませんね。
むしろお目目がキラキラとしています。