「許嫁なんざ断固反対だ」
緋村剣心と薫さんのやって来た夜。お酒を飲みながら、そう確固たる意志で告げる左之助さんに苦笑を浮かべつつ、すでに寝静まった子供達を見る。
何の憂いもなく静かに穏やかに眠る子供達の顔は愛おしく何よりも尊く見える反面、私の隣で新しく生まれそうな鬼から顔を背けています。
左之助さん、とても怖いです。
角が生えたら、逃げますからね?
そう心の内で思いながらお酒ではなくお湯に梅干しと生姜を刻んだものを飲み、ほっこりとする私の隣に移動してきた薫さんに目配せをする。
「景さんはどう思ってるの?」
「私は二人の意思次第だと思っていますよ。二人ともまだまだ子供ですけど、自分で考えて話すことは出来ますから、それに無理に押し付けるのはダメです」
「そうよね。でも、剣路はしとりちゃんを本気で好きみたいなのよ」
「しとりは、どうなんでしょうね。天兵君や斎藤さんのところの息子さんにも気に入られていますし」
「おろ。斎藤もでござるか」
とは言っても少し話しただけですけど。
「そもそも剣心がまだ景を怪しんでるだろ」
「えっ。剣心、まだなの?」
「お、おろぉ……」
まるで悪戯がバレてしまった子供のように視線を逸らす緋村剣心。私の何処が怪しいのかと薫さんな問えば「気配」と答え、私の何処を警戒するのかと左之助さんが問えば「知略」と答え、緋村剣心は私の事を見据えたまま、率直に答えた。
分かっていましたけど、やっぱり悲しいです。
「お前は親友だと思ってる。だが、オレの女を警戒している間は剣路君だろうが誰某だろうが、しとりもひとえも嫁にはやらん」
「左之助さん…」
嬉しい。
でも、二人が行き遅れちゃう。
「確かに拙者は糸色殿を酷く警戒している。が、直ぐに警戒は解けぬでござる。嫌いだからではなく、糸色殿に似たような敵と何度も戦い、苦戦を強いられた経験ゆえにござる」
それは、誰の事を言っているのでしょうか。いえ、そもそも緋村剣心に苦戦を強いる相手が幕末に何人も居たというほうが恐ろしい。
「やっぱり、私がいるから緋村さんは剣路君としとりの許嫁は反対なんですか?」
「は?許さないわよ、剣心」
「そ、そういうわけではござらん。いや、拙者としても受けたいのでござるが、剣路が『しとりちゃんに勝ってない』と一点張りで…」
「「ああ、そういう?」」
「無理だな。しとりは姿や瀬田以上の天才だ」
「やはり左之もそう思うでござるか」
天才。
多分、その一言で片付ける事は出来ませんよ。