不破信二とドクトル・バタフライの策略によって大怪我を負ってしまった左之助さんの身の回りのお世話を手伝いつつ、不破信二の置いていった『ヒーローマシン』の事を少しずつ調べて幾つか分かりました。
この『ヒーローマシン』は特定の特設ステージに
つまるところ、左之助さんは自我の無いNPCと対戦格闘ゲームをリアルに行えるというシステムに組み込まれ、勝負をしていたわけです。
『人斬り抜刀斎』というNPC。
『四乃森蒼紫』というNPC。
かつて左之助さんを苦しめた相手、と。
非常に不愉快でムカつきます。
だけど。左之助さんは楽しんでいた。あそこまで強くなれたら怖いものなんて無いのかも知らない。でも、それでも私は怖かったし、左之助さんにも傷付いてほしいとは思っていません。
そう静かに悩みながら右腕を三角巾で吊るした左之助さんの傍に寄り添い、いつも以上に彼を意識しつつ、彼の行動を手伝う。
「景、コイツはまだ使えるのか?」
「……使えますけど。教えませんよ?」
「教えてくれ。な?」
「ダメです。……いえ、教えても良いんですけど、私は左之助さんが無茶をするからイヤなんです。大怪我をせず、無傷で勝てるなら良いんです」
「そりゃあ無理だ。喧嘩で拳や蹴りを受けずに逃げるのは難しいからな」
おむすびを頬張り、そう告げる左之助さんに「でも、こんなに酷い怪我をしたのに、また入るなんて」と、これ以上ひみつ道具を使わないように訴える。
「悪いな、景」
コツンとおでこを合わせるように抱き締めてきた左之助さんに驚きつつ、ゆっくりと口許についた米粒を取り、彼の口に差し込み、笑う。
「分かりました。だけど、怪我が治ってからです」
「ありがとうな」
「フフ、約束は守って下さいね?」
そう言うと左之助さんは苦笑いを浮かべながら「お前も守ってくれよな。あの約束」と、私のチョーカーを指でなぞった。
えぇ、約束なので守ります。
ふたりで話しながら左之助さんと見つめ合う。
「ちゅーするの?」
「っ、し、しませんよ!」
「ん!ん!母様、照れてる!」
「て、照れてませんっ」
「何度もしてるだろ。慣れろよ」
慣れないんですよ、そういうことは本当にっ。
不満と恥ずかしさに顔を背けつつ、私は静かに左之助さんのことを見上げる。どこまでも強くなりたいと願うのは、男の人にとって当たり前の事なのかな。