某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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架空の敵 急

二十七戦、二十七敗。

 

左之助さんは極限流空手の創設者タクマ・サカザキと半日ほど勝負を繰り返し、お互いに技の手の内をさらけ出している状態まで持ち込み、今まさに二十八戦目を開始し、左之助さんは極限流空手の技の一部を無意識的に使い始めています。

 

修羅の如き強さを持つ不破信二。

 

彼と無手で渡り合えるのは左之助さんだけ。九百年不敗の陸奥出海や陸奥天兵は其々の強敵と死闘を繰り広げ、どちらも相手に勝利した。

 

しかし、二人の陸奥と不破信二は違う。

 

二人は強敵との戦いを求めているけれど、不破信二は『戦い』その物に取り憑かれ、あまりにも強すぎるために外道に成り掛けた経験もある。

 

その時も左之助さんが彼を止めた。

 

不破信二にとって、相楽左之助は最強の敵です。

 

自分に比肩し得る存在として。あるいは、自分に追随して決して途切れること無く追いかけ、いつか自分を乗り越える最強の敵だと信じている。

 

岡田以蔵を喪った喪失感さえも忘れてしまえるほど不破信二は左之助さんに執着している。子供とお嫁さんを設けてもその切望は終わらない。

 

「っ、はあぁぁ……ようやく一勝だ」

 

ぐったりと倒れ伏しながら呟く左之助さんの頭を優し撫でてあげ、無事に帰ってきてくれた事を喜びつつ、傷だらけの左之助さんに悲しさと不安が溢れる。

 

今日一日、ずっと左之助さんが大怪我を負って死ぬかもしれないという不安で泣きそうでした。それなのに左之助さんは勝てたことを喜んでいる。

 

ひどいです、あんまりです。

 

「……左之助さんのおばか」

 

「イテテッ…」

 

ペチペチと彼のおでこを叩いて、不満をぶつける。でも、左之助さんは痛がっているようには見えず、楽しそうに笑いながら私の手を受けている。

 

私の事を騙している訳じゃないけど。

 

こんなに不安にさせて楽しそうに笑うのは酷いです。あまり酷いと実家に帰ってしまいますよ?と言ったら顔つきが変わって手首を掴まれる。

 

「お前の居場所はオレの隣だ」

 

「……フフ、なんだか気障っぽいですよ」

 

左之助さんの一言にクスリと笑みを浮かべ、ゆっくりと叩いていたおでこを優しく撫でてあげる。ちゃんと決まった時間に戦って下さいね。

 

それにしても、対戦格闘ゲームの中に入れない不破信二はものすごく悔しがっていそうですね。あの人、私と変わらないぐらい色々と試しているまたいですし。

 

「景、オレはまだまだ強くなる」

 

「目標は世界最強ですか?」

 

「そのためにも、まずは日本最強だ」

 

そう言うと左之助さんは笑って拳を握り締める。

 

 

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