何事もなく喫茶店でお茶をした二日ほど経過し、私は左之助さんがしとりとひとえと一緒にお風呂に入っている間に色々と準備をする。
『ヒーローマシン』のセレクト画面に載る人物は一人を除けば全員知っています。姿お兄様の仮想体を構築・構成しているのは凄く悲しいです。
私の家族を道具のように扱うのは止めて欲しいです。
でも、私には止める術も何もありません。使い方や修理の方法は『特典』のおかげで、簡単に分かるものの。あくまでわかるだけ。
この『特典』は二十年近く私の生活を支えてくれた、とても優秀な恩恵であり私個人の身体に収まるには容量の大きすぎる能力だと思います。
「(子供の邪魔にならないといいんですけど)」
そんな思いを抱きながら『ヒーローマシン』に映っている画面は最終ボスに変化し、頭痛を引き起こす。ドクトル・バタフライと不破信二のやりたいことは、いつも謎のばかりです。
いえ、男の人は最強になりたいのですよね。
どのキャラクターも危険な人ばかりで、とくに危険なのは「オロチ」。『ゲゲゲの鬼太郎』と繋がる世界で、彼の存在は最も恐ろしい。
ヤトノカミ。もしも、その存在を依代に選び、顕現した場合、日本はおろか世界も巻き込んだ大事件に発展し、世界は滅亡する。
そうならないためにも安全な生活を送りたいです。
そう切実に願う私と違って、この機械は次の対戦相手を求めるように稼働している。電源を切っても勝手に再起動し、モヂカラも受け付けない。
もはや怪異の類い。
「景、景?けーい、聴こえねえのか?」
「……聴こえてますよ。お腹撫でないで下さい」
「じゃあ、反応してくれよ」
すりすりと私の事をお膝の上乗せ、耳元で何度も名前を呼ぶ左之助さんの手が私のお腹を撫でる。細すぎるとかもっと食べろとか言われますけど。
これでも食事の量は増えています。
すごい進歩だと思うんですけど。やっぱり他の人のようにふくよかな体型のほうが左之助さんも良いのでしょうか?と首を傾げ、悩む。
「景、変な靄が出てるぜ」
「触るのはダメですよ、あれは邪気です」
仮想空間の中に顕現した擬似的な「オロチ」の意識が現実世界まで干渉しようとしている。ですが、その干渉能力はモヂカラのおかげで激減しつつある。
「景はあの男を知ってるのか?」
「……知りません。いやな気配がするので」
ふいっと顔を逸らす。
左之助さんは気付いているのか、私の顔を顎下から掴み、むにむにと頬っぺたを押さえ、ジーーーッと私の事を怪しむように見つめる。
知らないものは知らないのです。
怖いもの見たさ?そんなものはありませんし、危険な相手と好き好んで対話も会話もするつもりはありません。だって、怖いから……。