陸奥天斗の無形の構えに対し、左之助さんは腕を軽く上げた程度の無骨な喧嘩殺法の構え。緩やかに特設ステージ「御前試合」の中心に立つ二人はお互いを見据えていたとき、最初に動いたのは陸奥天斗────。
彼は一足で間合いに踏み込み、上段回し蹴りに見せ掛けた股間部位へ向けた変則的な蹴り。───陸奥と不破の両家に存在する圓明流「紫電」を左片腕で左之助さんは受け止め、体勢を立て直す最中の陸奥天斗の頬面を殴りつぶす。
しかし、派手に吹っ飛んでいる見えるけれど。自ら殴られる方に向かって陸奥天斗はいち早く飛び退き、ほとんどダメージは受けていない。
ゆっくりと立ち上がった陸奥天斗は閉じていた片目を開け、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべ、初めて圓明流としてよ構えを取った。
左之助さんは元々強いけれど。
彼は純粋すぎる程に喧嘩を楽しみ、相手の力も引き出してしまう。最近は私のためにやりたくもない喧嘩をさせてしまったから、こうして楽しそうに笑っている彼を見ることが出来るのは嬉しいです。
整地された砂利場を蹴り、跳ねる。
左の横蹴り、左之助さんは肘で蹴りを防ぐ。
が、防がれた腕を利用して右の後ろ蹴り、更に続けざまに左のかかと落としが連鎖し、二秒───僅かに陸奥天斗は空を飛んでいた。
着地する寸前、攻めは左之助さんに変わる。
無骨な大振りの右。鉤突き。直突き。どちらとも思える術理など欠片も感じない腕力に任せた剛打が陸奥天斗の盛り上がった胸筋を殴り、今度は防ぐ暇もなく左之助さんは乱打を叩き込んだ。
───刹那、左之助さんが後ろに弾ける。
圓明流に於けるゼロ距離打法「虎砲」。
中国拳法で言えば寸勁。骨法風に言えば徹し。その一撃を間近で胸に無防備に受けた左之助さんは血を吐き、ふらつき、血を吐き捨てて陸奥天斗を睨む。
数十発の乱打の重さを一撃で跳ね返した。
流石は陸奥圓明流です。けど、左之助さんは一撃で沈むほど柔な鍛え方はしていない。不破一族の歴史上、最も闘いの神様に近付いている不破信二を倒すために彼は鬼の領域に片足を踏み込んでいる。
砂利を蹴って二人は同時に走り出す。
大振りで大雑把な顔を踏みつけるように放たれた前蹴りを陸奥天斗は両腕で止め、左之助さんの長い足に添って肘を繰り出した。アレは、圓明流「蛇破山」の変形型でしょうか?本来、蛇破山は相手のパンチに合わせてひじ打ちのカウンターを加える業。
その業を受ける一瞬の刹那、左之助さんは力任せに踏ん張り、陸奥天斗を押し退け、そのまま力任せに彼の身体を踏みつぶした。
戦いは、まだ始まったばかりです。