「グッドEvening。お邪魔しているよ」
私の書斎に入り込んでいたドクトル・バタフライと、ひとえを抱っこして見つめ合うススハムに困惑しつつ、書斎の戸を閉めて台所でお茶菓子と来客用の湯呑みを取り出してお茶を注ぐ。
いそいそとお盆に乗せて運ぶ。
戸を開け、お茶とお茶菓子を小さな机に置く。
「ありがと。カッケマッ」
「良いんですよ、娘の遊び相手をしてもらっていますからら、良かったですね、ひとえ」
「あい!すーちゃん、おっきい!」
「アイヌは特に大きいよ」
ペチペチと胸を叩かれても動じないススハムを少しだけ羨みつつ、二人が揃って我が家を訪ねてきた理由を聞けば目眩を起こしそうになります。
「三途の川の氾濫に呑まれたって、不破さんはまだ見つかっていないんですか?」
「彼の生存は私のチャフで確認できているが、何分三途の川とは未知の場所だ。私達の知識では辿り着けない場所であることもまた事実なのだよ」
「まあ、あのバカなら無事でしょうね」
微塵も心配していないススハムが、こちらに来た理由は不破信二の奥さんに相談され、仕方なく捜索に加わっているからだそうです。
本当に仲良しですよね、羨ましいです。
それにしても不破信二が三途の川に行ってしまったということは外道衆の根城に入っているわけですし。あの人が素直に戻ってくるとは思えない。
絶対に何人か倒して戻ってきます。
そうなったら、とても大変な事になる。
修羅の強さは知っていますけど。何千、ひょっとしたら何万と存在するナナシ連中に捕まったら「敗北」になるのではないんですか。
不破四百年の歴史に敗北の二字は無い。
そう豪語していた彼が負けるとは思えませんが、だからこそ不安になってしまう。あの人は絶対に退こうとしない。白面の者のときも、地獄門のときも、彼は最前線を駆け抜けていた。
「悩まなくて良いわよ。アタシなら捕まえて引きずって帰ってこれる」
「ススハムさん……」
「ススハム君と信二君は年齢も近い。それに二人ともお互いの強さを信頼しているからね。私達よりも親しく、言わば相棒の様な間柄なのさ」
「そんなんじゃないわよ、アタシはアタシのやりたいようにやっているだけ。アイツを助けるのも知り合いだからってだけよ」
これは、ツンデレなのでは?と感心しながらも不服そうに顔をしかめるススハムに見られてしまい、私は何も言えず、静かにショドウフォンを開く。
「では、門を開きますよ?」
「うむ、頼むよ」
「速攻で連れ帰る」