「今ッ、ここでぇ゛ッ、死ぃんねェエッ!!!」
ススハムの純然たる殺意は神々しく光り輝く右足に集束し、不破信二に向かうも柔の投げで彼女はナナシ連中に向かって飛び蹴りをめり込ませ、吹き飛ばした。
サンピタラカムイ様の加護って水辺だと無類の強さを誇るのでしょうか?と首を傾げつつ、意識をしっかりと切り替えて二人を見据える。
でも、ナナシ連中に混ざったアヤカシも蹴り砕き、粉砕しているのよね。そう思いながら門の維持に集中していた私の耳に三味線の音が響く。
────薄皮太夫が現れる。
「何の騒ぎだい?」
「ナー!」
「うるさいよ。……おや、いつぞやの」
ベンと弦を弾き、此方を見る薄皮太夫にビクリと身体を強張らせながらも不破信二とススハムに視線を向けると二人は薄皮太夫の両脇をすり抜け、同時に回し蹴りを繰り出し、門の向こう側、三途の川に蹴り落とす。
「アタシの友達に近付くな」
「アヤカシィ…俺と戦おうぜ!」
私の事を心配してくれるススハムに嬉しさを抱きつつ、此方に戻ってこようとしない不破信二に「貴方は家族がいるでしょう!」と告げる。
本当にもうっ!
「行くわよ殺人バカ阿呆修羅ゴリラ」
「語呂悪くね?」
「殺人バカ、阿呆修羅、ゴリラ」
「ごめんて」
渋々と帰ってきた不破信二の後ろ腰に刀が見える。どこかで見たことのある刀にイヤな予感を抱きながら、私の記憶と違ってほしいと願う。
「信二君、その刀は?」
「これか?紅いアヤカシからブン盗ってきた」
やっぱり血祭ドウコクの小刀ですよね。いえ、小太刀と言った方が分かりやすい大きさですし。でも、やっぱり返して貰った方が良いのでは?
「かっこいいし、不破の家宝に据えとくか」
「据えないで下さい」
「アンタ、そういうところよ?」
「どういうところだ」
……とりあえず、もう門を閉じますね。
べこべこにひしゃげてしまった電光丸にしょんぼりとするしとりを慰めるひとえの傍に座り、静かに悲しさを受け止めてあける。
新しく打ち直して貰いましょうね。
「もっと長いのがいい」
「長いの?」
「ん、む、むみょ?むびょーじん、えと」
無明神風流の事を言いたいのかしら?と首を傾げつつ、電池切れを起こして色の消えてしまった電光丸と鞘をドクトル・バタフライに預ける。
「次は長いものがいいそうです」
「ふむ、まだまだ小さな君には早いと思うが?」
「ん!ん!ん!」
「HAHAHAHA。効かないなあ」
ペチペチと足を叩かれても微動だにせず、ドクトル・バタフライは高笑いを浮かべて、空に舞い上がっていきます。不破信二は『どこでもドア』を使えませんよ?