不破信二の帰還をしっかりと叱り、みんな彼の無事を喜んでいると左之助さんが帰ってくるなり、不破信二は左之助さんに喧嘩を売りに向かう。
あの人は懲りるということをしませんね。
少し呆れたように溜め息を吐いて、しとりとひとえを連れて居間に向かう間にススハムはどこでもドアを使って北海道のコタンに帰っています。
「みんな、元気ですね」
お母さんはちょっと疲れました。
そう呟きながら私はモヂカラを込めすぎて少し壊れてしまったショドウフォンを居間の戸棚の上に置き、静かに手を合わせてお礼を伝える。
「お帰りなさい、左之助さん」
「ただいま」
不破信二を閉め出してくれた左之助さんの手荷物を受け取り、しとりとひとえに運んでほしいとお願いすれば素直に受け取って運んでくれます。
勝手に開けたりしちゃダメですからね?
それにしても、今日は色々とお土産が多いですけど。なにかお祝いでもあったのでしょうか?と首を傾げつつ、左之助さんの背広を受け取る。
「景、なんか焦げ臭くねえか?」
「お魚を焼くので七輪を温めているんです」
「そうか」
「そうなんです」
夏なので本当は鰻の蒲焼きを作る予定ですが、しとりとひとえは初めての鰻の蒲焼きですから味付けは少し甘いタレにしようかと悩む。
こういうときに『料理のスキル』は役に立ちます。ここ数年で分かったことですが、この『特典』は広義的な料理の意味を持っているようです。
私がダイナマイトをミスせずに作れたのも、謎すぎるほど簡単にショドウフォンやその他のアイテムを作ることが出来たのもこの『特典』によるものです。
ここまで私に強い能力を与えて、神様は何を考えているのでしょうか。いえ、おそらく楯敷君の対抗馬になることを期待しているんでしょうけれど。
「景、さっきから気になってたんだがよ」
「はい、なんですか?」
「そのオッサンは誰だ?」
「え?」
左之助さんが私の後ろを見遣るので釣られて、そちらに視線を向けると
「ぬらりひょん?」
「おや、ワシの事を一発で見抜いたのはお前さんが初めてだよ。流石は神が見初める巫女、霊能大家の血筋だ。しかし、霊能力はてんでダメなようだ」
しゃくりと林檎を頬張る日本妖怪の総大将「ぬらりひょん」の存在に驚きつつ、左之助さんは攻撃を仕掛けようとする手を慌てて止める。
「ぬらりひょんは、妖怪の総大将です。無益な戦いは好まない、子供好きの妖怪なんです」
しとりとひとえが警戒していないのが、なによりの証拠ですから今は止めて下さい。