姿お兄様の収集品。
今にして思えば裏正の他にも様々な物がありましたね。竜骨精の妖刀もそうですが、両端に刃を取り付けた薙刀や錆びて汚れた刀もあった。
全ての妖刀や霊刀を把握している訳では無いですが、少なくともメジャーな妖刀は揃っていたと思う。そう考えていると左之助さんが土で汚れた蛮竜を磨いているのが見えて、少しだけムッとしてしまう。
大鉾に妬心を抱くなんて私は嫉妬深いです。
「景、丁子油ってどこだ?」
「蛮竜を掛けていた場所の脇に置いていますよ?取ってきましょうか」
「助かる」
「フフ、良いんですよ」
ゆっくりと木箱を手に取って縁側に腰掛け、片腕で蛮竜を持ち上げる左之助さんの隣に座り、打粉と丁子油を取り出して、左之助さんに手渡す。
「ありがとうよ」
「はい」
蛮竜の手入れを続ける左之助さんの側を離れるために立ち上がると何故か蛮竜の鳴動が聴こえ、私の持つ懐剣も同じようにドクンッ…!と鼓動を鳴らす。
初めての出来事だ。
まさか「彼」がここに来ているのかと不安になるもモヂカラの結界を越えることが出来るのは白面の者やぬらりひょん級の大妖怪でなければ不可能です。
もしものときに備えて、しとりとひとえには薫さんのところに逃げるように伝えていますけど。二人が素直に従ってくれるのかが分からない。
「…あのぬらりひょんか?」
「いえ、違います」
ショドウフォンは三途の川に繋がる「門」を維持するときに負荷を掛けてしまい、今はドクトル・バタフライにメンテナンスを頼んでいます。
不安になりながら正門の方に視線を向けていると現れたのは刀を持った姿お兄様でした。廃刀令を無視した出で立ちは姿お兄様なのに、私の目は姿お兄様として彼を認識していない。
「奈落っ、左之助さん…!」
「落ち着け。土くれだ」
「え?」
私が悲鳴を上げるよりも素早く奈落の真似ていた姿お兄様は左之助さんによって真っ二つに切り裂かれ、人形と髪の毛が残っているだけです。
どうして、いきなり我が家に来たの?
そう不安に思いながら人形を手に取り、土くれの中に埋まっているものに気付き、それを手に取ることはしません。手紙。私の名前を綴った手紙です。
絶対に悪いことが書いてあります。
「手紙だな。読むか?」
「読みません。怖いですから…」
「オッサンに宛名変えとくか」
奈落の手紙はドクトル・バタフライへのラブレターに変わるのは構わないんですが、ここにやって来た奈落の傀儡はどうしたら良いんでしょうか?