「…………ひとえ?」
「あい!」
翌朝、寝ずの看病をしていた私は娘の小さな手を握っていた手を緩め、目元を擦ろうとするひとえの目尻をハンカチーフで拭いてあげ、呼び掛ける。
すると、ビシッと挙手する娘はいつも通りなのですが、妖気も吸い取ってしまったせいか。少し目の色が赤く変化し、また私と同じ薄い青色に戻ってしまう。
どういう理屈なのでしょうか?
「妖怪変化していませんよね?」
「ひー、へーきだよ?」
「……フフ、良かったです」
ゆっくりと傷付けないように私はひとえを抱き締め、優しく頭を撫でても不思議そうに小首を傾げ、嬉しそうに笑顔を向けてくれる。
良かった、良かったです。ひとえの吸われていた魂は完全に戻っているんですね。それならひと安心……なのですが、安心したら腰が抜けてしまいました。
「かーしゃま?」
「何でもありませんよ、ひとえ」
よしよしと頭を撫でて、また布団に寝かせる。
「ねむくないよ?」
「ダメです。まだ病み上がりのひとえはもう少し眠っていないと。今は眠っていて、あとでみんなと一緒に遊びましょうね♪︎」
「むう」
ぷくーっと可愛らしく不満顔のひとえの頭を撫でて、ポンポンとお腹を軽く撫でるように叩いてリズムを作り、小さな口でアクビをする彼女に笑顔を向ける。
左之助さんは静かに私達の話を聞き、安堵の息を吐いて、私の身体をひとえの横に傾け、法被を布団代わりに掛けてくれた。
「景は先に寝とけ」
「すみません」
「なに気にするな」
そう言って貰える事は助かりますけど。左之助さんも一睡もせずに私と一緒にひとえの看病を手伝ってくれていたのに、申し訳なく思いながらも眼鏡を外して目を瞑り、ひとえの手を握る。
私の病を受け継いでいなくて良かったです。
おそらくしとりもひとえも左之助さんの強い身体を受け継いでいるから、そういうものに罹ることはないのでしょうが、やっぱり怖いものは怖いんです。
「景、お前は頑張ってるよ」
「んッ……どうしたんですか?」
ボヤける視界の中、私の頭を撫でる左之助さんを見つめ、不思議に思いながらも彼の大きな手を受け入れ、ゆっくりと意識を左之助さんに向ける。
よく分かりませんけど。
何も問題はないはずです。
うん、そのはずです。ただ、ちょっぴり娘達の前で頭を撫でられるのは恥ずかしいですね。べつに悪い気はしないのですが、やっぱり恥ずかしいです。
「口吸いしていいか?」
「ダメです」
口の前で左右の人差し指を使って小さなバツ印を作り、左之助さんのお願いを断る。が、普通にキスだけで何もなかったです。